邪教「全能神」の実態! 入信を断った女性がマクドナルドで撲殺される

 確かに、1949年の中華人民共和国の建国以来、中国共産党は数多くの宗教団体を厳しく規制して今日に至っている。特に1970年代後半までは国内のほぼ全ての宗教的な信仰を迫害していた。また、現在でも宗教団体の活動は厳格なガイドラインに縛られていることも事実だ。実際、中国のクリスチャンの信仰は政府の干渉を逃れるために伝統的に地下活動化し個人の家を教会にして継承されてきたという。まさに日本の江戸時代の「隠れキリシタン」さながらである。

 しかし、この宗教規制がカルトによる殺人事件の言い訳にはならないだろう。

 サイト内にあるチョウ・ウェイザン氏が記したとされる文の1つは「たとえ彼ら共産党の手が私を死に至らしめても、私の魂はまだ神の手の中にある。私は決して悪魔には屈しない」と述べている。どうやら同教団の周囲には抹殺すべき「悪魔」や「悪霊」が多くいるようだ。


■家族を崩壊に追い込むカルトの活動

 この記事を執筆したBBCのカリー・グレイシー氏は、カルト信者となった家族(妻とその父)を救出すべく自ら教団に「偽装入信」している人物に接触して話を訊いている。

「カルトは反社会的で反家族的、さらには反人間的な存在です。信者たちは夫や妻への嘘のつきかたを常にトレーニングされ、家族への裏切り行為をメンバー同士で褒めあっている」とその人物は語り、また「家族を裏切り、いかに多大なダメージを与えたかで教団内の高いランクを与えられるシステムが、それまでは親切な人物だった信者を狂気に駆り立てています」と記者に答えている。

 また教団に妻や夫、子供を奪われた家族のための数々のサポート組織には実は裏があるという。カルトからの救出を申し出るウェブサイトは教団の陰の組織によって運営されていて、信者の名前も身元情報も偽りであるため、追跡調査ははじめから不可能であるということだ。カルト被害にあう家族に支援を申し出て接触してくる親切な人物は、次第に脅しをかけて信者の救出と引き換えに金銭を要求し、時には新たなメンバーに加えるべく誘惑や誘拐の手段に出ることもあるそうだ。

 一般の宗教団体とカルト教団を分ける一線はどこにあるのか? それは教団が一般大衆の生活に危害を及ぼすかどうかがひとつの判断材料になり得ると筆者は考える。ある宗教団体が場合によって反体制的であることは理解できるものの、攻撃の矛先が国家から一般大衆、そして自らの信者に向けられたとき、それは狂気の「カルト集団」になる。信者本人だけでなく、家族など周囲の人間の生活をも台無しにしてしまうカルトの恐怖に対抗できるのはやはり情報であろう。危険なカルト教団の情報をいち早く共有することが今後ますます重要になると思う次第である。

参考:「BBC」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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