見えない絵、聞こえない曲、消された写真 ― 現代アートの価値を思考する
ニューヨーク在住のアーティスト、ラナ・ニューストーム(27)さんの開催した個展が、現地ならず世界中で話題になった。写真は、ニューヨークのシュルバーグギャラリーでの個展の様子だ。
そう、彼女の作品は「見えない」のだ。会場を訪れた人々は壁のしみを眉間にしわを寄せて見ているわけではなく、そこにある透明な作品を真剣に鑑賞しているのだ。さらに驚くべきことは、何人ものコレクターが彼女の見えない作品を買い、中には100万ドル以上の値がついたものもあるのだという。
大枚をはたいて購入したコレクターは、その見えない作品を後生大事に抱えて持ち帰り、見えない作品を自宅に飾っているのかもしれない。それを見た妻が、ついに夫がボケたのだと途方に暮れる…というのは筆者の想像するところではあるが、「見えないからといって、制作時間がかかっていないわけではない」というのは、作者であるラナさんの弁。
■アートといえば何でも許されるのか
これに対し、「アートをバカにしているのか」「ただのフェイクではないか」「アートという言葉を使えば何でも許されると思っているのか、彼女はアーティストでも何でもない!」…と、ネット上では大炎上する結果となった。
とはいえ、目の肥えたニューヨークのコレクターが100万ドル以上の価値を見いだした彼女の「見えないアート作品(Invisible art)」。わかる人には、わかるのかもしれない。彼女が手がけている作品の数々を一部紹介しよう。なにせセンスのない筆者には見えないため、作品の優劣は読者に委ねるしかなさそうだ。
シンプルなサイトだと思ったら、これまた筆者に見えないだけのようで、タイトルに作品のサムネイルがあるようだ。まずこちらは、「Green Box」という作品、うーむ…見えない。
こちらは、「Sleeping Dog」という作品。可愛いワンちゃんが…やはり見えない。
他にも色々と作品が掲載されているので、是非ご自身の目で彼女の力作をこちらの公式サイトから見てほしい。
サイトには「作品を購入したい場合は、コメントをください。全ての収益は寄付に使います。ます、どの程度で買いたいか金額を書いてください」と書いてある。コメント欄をのぞくと、色々な意見が見受けられるが、大半はジョークに付き合っている…という感じだ。
・確かに、アートとは想像の産物ではあるが、これはいくらなんでも悪質だ。ただのペテン師ではないか。
・すてきな作品だわ。買いたいのだけど、見えないお金で払うわ。あなたが言うように、見えないからって、そこにお金がないってことじゃないのよ。
・だれか、この掲示板に精神科医はいないのか?
・えええ! これは本当なの? それともドッキリ?
※次ページ、聞こえない音楽について
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