なぜ、「茨城新聞」は情報の“嘘”を見抜けなかったのか? 架空の白血病患者を信じた理由

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 10月24日付の『茨城新聞』が、急性骨髄性白血病で亡くなったとされていた元高校野球女子マネージャーが存在せず、中部地方に住む20代女性が作り上げた架空の人物であったことを報じ、記事の訂正と謝罪を行った。

 今年4月に、茨城県内の社会人野球チームに「ゆっこ」を名乗る人物からコンタクトがあった。彼女は現在高校3年生であり、昨年末に病気を発症し野球部のマネージャーを辞めざるを得なかった。ネットを通して力になりたいということだろうか? 社会人野球チームのマネージャーとなり、テレビ電話を通して連絡を取っていた。さらに、日本各地のグラウンドにひまわりの種を植えるプロジェクトも開始。「ゆっこ」も自筆メッセージを寄せ、協力者を募り、ネットで拡散されていった。YouTubeを検索すると、野球の名門校である仙台育英高校のメンバーが「ゆっこ」を応援する動画などが出てくる。

 一連の美談は地域の新聞社である『茨城新聞』に、7月27日付の誌面で報じられた。記事には、マスクで顔を覆い、ニット帽を被った「ゆっこ」の顔写真も掲載されている。マスクは感染症の防止、ニット帽は治療の影響で髪の毛が抜けてしまった、と言いたいのだろうか。ドラマや書籍などで目にするステレオタイプな病人の姿でもある。

 その後「ゆっこ」は亡くなったとされる。彼女の死はLINE上で妹を名乗る人物が知らせたという。命日は8月9日。ハチとキューが並ぶ野球の日であり、長崎に原爆が投下された悲劇の日でもある。なんだか、話がとてつもなくできすぎている。

「一連の騒動で浮かび上がるのは“ウラ取り”の重要性でしょう。政治記事や事件報道に比べ、感動エピソードということで、チェック体制が行き届いていなかった可能性があります。本人を問い詰めなくとも、家族や友人、あるいは入院先など周辺をあたれば“ウラ取り”は可能であったはず。結局、彼女がウソをついているはずがない、という前提で話が進んでしまったことが問題なのでしょう。言うなれば“霊感がある”“芸能事務所にスカウトされた”という中学生の言い分をそのまま信じているようなものです」(週刊誌記者)

 茨城と中部地方という距離も関係していたのだろうか。本人の直接取材は「病状の悪化」を理由に拒絶され、連絡はLINE上で行われたという。最終的には記事を執筆した記者が確認取材をしたことで、ウソが発覚している。

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