なぜ、「茨城新聞」は情報の“嘘”を見抜けなかったのか? 架空の白血病患者を信じた理由

 一見悪意なく素朴につかれたウソを皆が信じてしまう構図は、パソコン遠隔操作事件の片山祐輔被告を彷彿とさせる。一旦保釈されたのち、多くのジャーナリストが推定無罪の原則で接触を試みた。ジャーナリストの江川紹子氏は自身のブログで「人を見る目が足りなかった」と自省の弁を述べている。

 さらに、ブログの別ポストでは2009年に『週刊新潮』が一連の朝日新聞襲撃事件、いわゆる赤報隊事件の真犯人を名乗る男の手記を掲載した誤報記事を受けて自身の体験を述べている。地下鉄サリン事件よりも前、坂本弁護士一家の真相を知るという男が接触してくるもウラが取りきれず記事化は見送られた。男は「マスコミで仕入れた話を元に一から十まで嘘を述べ立てている」だけであったが、「肝心なところでの言い淀み」がリアリティに転化してゆく危うい感覚を記している。

「新聞社や週刊誌に情報提供をしようとする人間は無数にいます。内部告発もありますが個人的な怨恨、妄想としか取れないものも多い。目先の現金謝礼を目当てに各社に電話をかけ、もっとも高くネタを買ってくれる編集部を探そうと必死な人間もいます。今回のケースは金銭を要求するわけでもなく、ただ“自分を認めて欲しい”という純粋な動機が先行してしまった。うさんくささがない分、マイナスに影響してしまったのでしょう」(前出・同)

 本人にとってみれば小さなウソだったのかもしれない。しかし、話が大きくなることで引けなくなってゆく。今回のケースは、ネットで拡散するあやふやな情報に、無批判に乗っかってしまったメディアの劣化を浮き彫りにしているのかもしれない。

 ネットが普及する前からあった“ウラ取り”の問題だが、ネットの成長とともにネタ探しに貪欲なるマスコミが、大した取材もしないで情報を掲載することも増えてきた。結局、本当の情報はウラ取りをしっかりと行ったものだけということだろう。
(文=平田宏利)

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