稀代の芸術家・赤瀬川原平が遺したモノ ― 最期まで世間を翻弄したトリックスター

 裁判においては、本物の紙幣との類似性が争点の一つとなり、おもちゃの紙幣が資料として提出されたほか、濃度を変えた紙幣のコピーを並べ視力検査表に例えた「紛らわしさ検査表」を作成するなどユニークな活動を展開した。裁判の末、判決は懲役3カ月、執行猶予1年の有罪となった。この裁判中、赤瀬川さんらは、「大日本零円札」を作り、希望者は現金と交換できるようにしている。ゼロ円という無価値な数字が記された紙幣らしきものと、現金を交換する行為は、資本主義への皮肉といえよう。

 80年代には、「路上観察」で発見した無意味なものを面白がる超芸術トマソン」の概念を提唱。90年代に入ると、国語辞典の身勝手な記述に面白みを見出す『新解さんの謎』(96年/文藝春秋)、自身の老いを肯定的にとらえた『老人力』(98年/筑摩書房)を出版。何気ないもの、当たり前に存在するものに魅力を見出す姿勢は終始一貫していた。

 10月28日からは千葉市美術館で、これまでの活動をふりかえる『赤瀬川原平の芸術原論』展を控えていただけに、突然の訃報が悔やまれる。
(文=平田宏利)

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