見たら、たちまち情緒不安定なる ― ギガ・シュルレアリスト、スィリアックの超悪夢世界
石川翠のワールド・ミステリー・探訪 〜21世紀のギガ・シュルレアリスト、スィリアック・ハリスの超悪夢世界〜
お国や公立機関がお墨付きをあたえる、優等生的な芸術が、あいかわらず巾をきかしてるわれらがニッポンだが、いやいや、流石、諸外国はそうでもないぞ。
公認アートに飽きたらない、心ある連中は、ひとびとの魂の路地裏や暗渠を苗床に、こっそり、そしてせっせっと非公認の、つまりアングラ(アンダー・グラウンド=地下)芸術の花園をこしらえてやまない。かれらは知っているのだ。毒をなくした芸術はもはや、歌を忘れたカナリヤでしかないことを…。
■遅れてやってきた、映像のシュルレアリスト
さて今回は、昨日と同じ今日と、今日と同じ明日の中にまどろむことを、幸福と固く信じて疑わない、頭カチカチ超保守派人間のあなたの脳天に、軽く千の風穴をあける、超弩級のアングラ・アーティストの1人をトカナに、ご招待しよう!
イギリスはイングランド南東部、シーサイド・リゾートとして知られるブライトンの街に住む、フリーランス・アニメーターのスィリアック・ハリス(Cyriak Harris)氏だ。以下、敬称は略させていただく。
日本ではまだ、認知度がそんなでもない彼だが、その多才さには舌を巻くほかはない。アニメの他にイラスト、マンガ、CM、PV、作曲など、ジャンルを横断して大活躍のマルチぶりだ。
…と、能書きはこれくらいにして、とにかく作品をご覧いただこう。少数のコアでマニアックなファンにはじまり、近年、地球規模で次第に中毒者を増やしつつあるスィリアックの悪夢創庫から、今回は、筆者が夜も寝ないで昼寝しながらセレクトした、珠玉の3本をご紹介しよう。
「Cycles(どうどうめぐり)」(2010年、2:59)、「Welcome to Kitty City(ネコ街に来てみてネ)」(2011年、1:49)、「malfunction(誤作動)」(2014年、2:13)のラインナップだ。
では、はじまり、はじまりぃ。
■Godzillaじゃないよ、クマくんだよ
まずは「Cycles」─。これってどうやら、かわいいティディ・ベアたちがこぞって、海から街に攻めてくるお話らしい。進撃の巨人ならぬ、侵攻するクマちゃん軍団だが、いかせん、かれらには統制がない。ま、そんなこと、どうでもいいけど。
このシチュエーションは、お馴染み、我が『ゴジラ』のプリティーなパクリの様子。それにしても、クマくんたちの、あのふわふわした愛らしさが、ヤバい。気がつくと、いつのまにか、かれらを応援している自分に気づいたりする。もっとも、軍団の目的は最後までわからずじまいだが…。
クマくんたち、はじめは車のあいだをおそるおそる横断。でも、だんだんとアナーキーに。唐突に、巨大ベアも登場。人間を吐き出したり、食べたり。鳩もでるし、カモメも登場。ああ、もうなにがなんだかわからない…。既成アニメの関節が、あちこちですっかりはずれちゃってるよお。とにかく、まずはご覧あれ。
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