超天才サルヴァドール・ダリの意外と知らない10の秘密・後編!

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サルバドール・ダリ

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画家

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石川翠

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※イメージ画像:『Salvador Dali: The Paintings』

『前編はこちらから』

■【6】原子の国のダリ(Dali Atomicus)

 ダリと、ニューヨークで鳴らしたラトビア出身の高名な写真家フィリップ・ハルスマン(Philippe Halsman/1906-1979)によるコラボレーションが、「ダリ・アトミカス=原子の国のダリ」である。この愉快な連作は、妻のガラが神話のレダに扮するダリ作「レダ・アトミカ」(Leda Atomica)に対する一種のオード(頌歌)と言えるものかもしれない。

 一見すると、無意味とさえ思われるシチュエーションの中では、ヘビのようにのたうつ水の流れ、ダリと家具、そして数匹の猫たちの姿が見てとれる。現在ならCGやフォトショップを使って得られる効果を、早くも1948年の時点で実現しているのを考えれば、これは実際、驚くべき写真ではあるまいか?

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※画像:『Wikipedia』より

 けれどもその代わり、往年のやり方で撮影されているため、天井からは家具類がワイヤで吊され、そこでダリは繰り返し飛び跳ね、またフレームの外から誰かがバケツの水と、生きた猫を何度も放りこむ。その苦労は並々ならぬことは容易に想像がつくだろう。

 残念ながら、期待のショットが得られたのはたったの1、2枚に過ぎない。そのために奇跡を得るために撮影クルーは、なんと計28回、約6時間もこの馬鹿げた試みを続けるはめになった。おそらく、1つ1つのショットの舞台裏には、恐怖のあまり狂ったように悲鳴をあげながら逃げ惑う猫たちを、そのつど捕らえようと悪戦苦闘した数人のお手伝いがいたにちがいない。彼らの両手に残ったであろう無残な引っかき傷を想像すると、なんともお気の毒な気持ちになる。

 さて、ここで、二人のアーティストの奇跡とも呼べそうなコラボをとっくりとご覧になりたい方は、下の動画を是非、お試しあれ。

『Philippe Halsman and Salvador Dalì』YouTubeより

 なぜ、この写真が「原子の国」なのか。少し話がややこしくなるが、それは20世紀前半における原子の内部構造の解明と関係している。長らく西洋哲学ならびに科学では、『この世には、それ以上「分割できない」最小単位である「原子」という眼には見えないものが実在している』という考え方が金科玉条だった。だが、前世紀の半ばまでに成立した量子力学によって、それは完全に覆えされてしまったのだ。

 たとえば、原子は、プラスの電荷を帯びた原子核と、マイナスの電荷を帯びた電子からなり、原子核はさらに陽子と、電気的に中性な中性子からできているということがわかった。そして、原子核の半径は原子の半径の約10万分の1ときわめて小さい。

 ここからご推察いただけるように、原子とは固い物質でも球体でもなく、スカスカの空虚な空間に、点として存在する原子核と電子からなっており、しかも電子は原子核のまわりを衛星のように回っているわけでもないのだ。量子論では、「電子は原子核のまわりに確率的に分布している」という言い方をする。なかなかイメージしにくいことだが、電子はあたかも雲のように、原子核を包んでいるものらしい。

 以上、簡単にまとめると、原子の外─つまりわたしたちが住んでいる、いわゆる物質の世界と、原子の内部の世界とでは、成り立つ自然の法則が全く違っていることになる。だから、原子の内の世界は「天国」であり、「神と天使(と、もしかしたら悪魔も…)」の住みたもう天上的な空間だとダリは考えたのだ。

 彼は、恐ろしい核時代の幕開けに、地上の終焉の可能性ではなく、逆に、人類が神や天使と合一する新しい時代到来を楽天的にも幻視してしまったのだった。いやはや、なんともダリらしい話で、ちょっとコメントのしようがない。

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