米国特撮界に日本の美学を吹き込んだ男! ハリウッド発の特撮ヒーロー「フジヤマ・イチバン」!

■殺陣を武器に、米国に乗り込む

――それではどういった継起でアメリカに来て活動することになったんですか?

ヤマト 友人のひとりが、ロサンゼルスに留学していて、何度か訪ねて遊びに行きました。その際に、現地の道場でトレーニングしたり、大手のスタジオに見学に行って、文字通りアメリカの“スケールの大きさ”に驚かされたんです。その規模の大きさに圧倒されつつ、「アメリカで日本の殺陣をやれば何かおもしろい事ができるかも?」とインスピレーションを感じたのがきっかけでアメリカに移住してきました。あまり深刻には考えず、飛び込んだ感じですね。今思うとかなり無謀ですが。

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――アメリカに来てから、すぐにスタントマンとして活動したんですか?

ヤマト 最初は別の仕事をしていたんですが、ちょうどその頃日本の戦隊ヒーローのリメイクであるパワーレンジャー( Power Rangers)がアメリカで放送が開始され、大人気になりました。ただ、同時はまだスタントマンとしてビザが無かったのでパワーレンジャーのオーディションを受けられませんでした。でも永住権を取得後、仮面ライダーのオーディションがあるというのを聞きつけて、パワーレンジャーのプロダクション会社でもあるサバン・エンターテイメントへ行ったら、即採用されました。マスクド・ライダー(Masked Rider)のスタントコーディネーターと第2班監督とスーツアクターとして全米テレビデビューできたのは感慨無量でしたね。妻と抱き合って喜びましたね。現在も、文句ひとつ言わずについて来てくれている彼女には本当に感謝しています。

――夢の原点である仮面ライダーでデビューとは運命的ですね。

ヤマト そうですね。でもある意味必然と言うか、アメリカのスタントやアクションはどうしても日本のものとは違うので、動きがライダーっぽくなかったんですよ。自分は本場日本の仮面ライダーで経験がありますから、アメリカ人プロデューサーからは重宝されましたね。同じ撮影でスーツアクターをしながら第2班監督も兼任してました。赤いガラスの視界が狭いマスク越しにモニターを見ながら指示出したりとか。もっとも、最初は英語ができなくて、唯一の日本人だったこともあり撮影現場では浮いていましたね。ほかのアメリカ人スタッフにしても英語も分からない奴からダメだしされて面白くなかったと思います。僕も悔しかったので必至に英語勉強したのとアメリカ人スタッフ間での立ち振る舞いも分かり、実際のアクションの出来上がり具合で次第にリスペクトを得られる様になりました。それがビートルボーグ(Beetleborgs、日本の「ビーファイター」)など次の仕事にも繋がっていきました。


■Fujiyama Ichibanの誕生

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――それではミチさんオリジナルの特撮ヒーローであるFujiyama Ichibanはどのように生まれたんですか?

ヤマト アメリカの特撮ヒーロー番組で仕事をしていたのと同時に、自分で企画を立ち上げ「Shogun Cop」という映画も主演とアクション監督で製作したんです。Fujiyama Ichibanに先駆けた自分のオリジナルヒーローで、大物俳優の藤岡弘さんにも出演していただいたハリウッド映画でしたけど、色んな軋轢が生まれ上手くいきませんでした。自分の中では特撮ヒーローをやりきった思いもあったので、次はバックボーンである殺陣をアメリカ社会に広めたいと思い会社を設立し、殺陣の学校と子どもの空手教室をオープンしました。そんな折、ある友人が「また特撮ヒーローやらないの?」と言われたんです。当時ハリウッド関連の仕事をしていても自分の中で常に特撮ヒーローものが後から追っかけて来る感じがあったので。ただし、またやるなら日本文化を体現するヒーローでなければ意義がないとして生まれたのがFujiyama Ichibanです。日本生まれ、日本育ちのSun Taiyoという大学生が主人公で正義のヒーローFujiyama Ichibanに変身し、悪の組織Dark Matterの魔の手から地球を守るために戦う物語です。女友達のSakuraもSakura Ichiban変身し、他にもFujiyamaアーマーとロボット鳥Emeraldの開発者、プロフェッサー・セバスチャンや武道師範のTsurugi Senseiなどの味方達の力を得てDark Matterの様々な怪人達と戦いの中で、キャラクターの過去や人間模様が描かれるドラマでもあります。

――日本でも秋田の「超神ネイガー」や沖縄の「琉神マブヤー」などのローカルヒーローがメジャーの特撮ヒーローとは違った個性を打ち出す事でヒットしましたが、Fujiyama Ichibanの特色は何でしょうか?

ヤマト 主軸となるのは日本と殺陣です!特撮ヒーローのアクションは時代劇の殺陣なんですよ。そしてアメリカンヒーローには無い変身ポーズは歌舞伎の見得からきていますから、Fujiyama Ichibanでもそれらを真髄にしています。ビジュアルも日本的な富士山や桜、兜に忍者に着物などがコンセプトです。特撮ヒーローの仮面も日本文化の表れですね。アメリカンヒーローもマスクをしますが目や口など部分的に顔が見えていたりするでしょう? 顔全体を隠していない。

――なるほど確かに。顔全体が被われているアメコミヒーローのマスクでも中の人間の感情を表そうとして、マスクが動いて表情を作り出しますよね。

ヤマト 日本製ヒーローの仮面は一切動かず無表情なのが特長です。これは能や狂言などのお面と一緒ですよ。仮面自体は一切動かないにもかかわらずわずかな機微を表現する事で、表情が生まれてくるじゃないですか。それは日本の特撮ヒーローが漂わせる哀愁もそれと同じです。こういった要素で日本文化の美学をFujiyama Ichibanを通して表現していけたらと考えています。Fujiyama Ichibanのスーツアクター達は日本人とアメリカ人の混成で、僕の道場で殺陣のアクションを学びつつ進んで日本の精神世界も学んでいますね。先ほども言いました日本の礼節を感じ取ってくれています。アメリカ人も非常に勉強熱心ですよ。

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