知られざる「献体の世界」ドナー登録から切り出し作業まで=米
4、専門家による献体の切り出し作業
アリゾナにある業界最大手の「Science Care」のメリンダ・エルスワース副社長は語る。
「ドナーを研究所に搬入後、さらに掘り下げて病歴を診ます。同時に、献体がクライアントのニーズに合うかどうか、専門家による見極め作業が始まります」。つまり、ひとつの献体からどれだけ多くのプロジェクトが創り出せるかということだが、通常、1献体からは平均して5件の医療研究プログラムが組まれるという。
Science Care社では「すぐに利用できる状態」に組織を解体し、要請があり次第急送するという。それらはバイオケミカルの研究者会議や人工股関節置換手術における新技術の発表のために利用されるのだ。組織を取り出した後の献体は火葬に回され、6週間以内に遺灰が家族の元に届けられるしくみだ。
「現在、1万8,000人のドナー登録があります」と話すのはメリーランド州にあるNPO法人「Anatomy Gifts Registry」の管理責任者であるカナ・ネイバートさんだ。ここでは毎月平均して70体の献体を受け入れているという。そして、その半数以上が自分の意思でドナー登録した人たちだ。
ところで、献体に協力するのはどんな人だろう?
Science Care社の調べでは、3人に1人が退役軍人だという。また、主婦や教師、トラック運転手もいる。愛する人の死を経験した人も多く、同病で苦しむ人の助けになりたいと願う人が大半だという。自らの意思によって自分の死さえも無駄にしないよう生前に決めておくという、いかにもアメリカらしい合理的発想と感じる。
アメリカでは1986年、カトリック教会が火葬を許可して以来、現在では土葬より火葬が多くなった。献体がアメリカで増えているのは、献体後、火葬にしてもらえるため、葬式代を浮かせることができるという経済的理由もあるかもしれない。そして今、日本でも同様の理由で献体を希望する高齢者が増えていると聞く。身につまされるというか、ちょっと複雑な気分になる。
(文=佐藤Kay)
参考:「Medical Daily」ほか
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