【科学と宗教】イエス・キリストは復活していなかった?イエスの墓論争が再燃!

 イエス・キリスト――。世界や地球の歴史を知る上、語る上で欠かせない『紀元前・後』という表現はまさしくこのイエスの誕生に沿って付けられた世界的な「基準」だ。今後、これに何か別のものが代替するとも考えられない。たとえ、ほかの宗教のこれまでと今後の勢力がどう変化しようと、それらの影響が及ばないほどに唯一無二で高尚な、単一の、あるいはすべてを覆いくるむような大きな存在、それがイエス、だとでも説明しておこう。

 そのイエスにまつわる仰天のニュースが、イスラエルのエルサレムから飛び込んできた。ニューヨークを代表する報道紙である「New York Times」やイギリス大手紙「The Independent」が報じた、宗教という地球規模のトピックに関して疑問を呈するニュースお届けしたい。


■数年前からの専門家同士の衝突を再燃させる? 科学的観点からのアプローチ

【科学と宗教】イエス・キリストは復活していなかった?イエスの墓論争が再燃!の画像1The Independent」の記事より

 イエスの墓というと、数年前の2007年、イスラエル・エルサレムのタルピオットで1980年代に発見されていた【イエスの墓】が、彼とその家族のもののである可能性が高い、というニュースが世間を騒がせた。最新の分析結果や統計的解析の調査結果は当時の米『ディスカバリーチャンネル』でも特集されるほどの人気ぶりだったのだ。

 しかし、一般にキリスト教徒に信じられているイエスの墓は、エルサレムにある「聖墳墓教会」や、その外にある「園の墓」と呼ばれる場所が有力視されていた。そのため、前述のタルピオットの墓は懐疑的な見方を免れられなかった。というのも、既に知っている人も少なくないと思うが、イエスの墓についてはこれまで諸説騒がれていたのだ。

 まず、ニコラ・プッサンの絵「アルカディアの牧人たち」には、キリストと墓石が描かれ、その絵画の中の墓石と瓜二つのものが、南フランスにある。そのため、この地で没したという「南フランス」説が存在する。またインドのカシミールにイエスと書かれた墓石があることによる「インド説」、また意外ではあるがここ日本の青森県にある「十来塚(とうらいづか)」がイエスの墓だとする「青森県説」など、信憑性や科学的・物的証拠に乏しいとはいえ世界のあちこちで取り沙汰されては専門家らによって討論されていた。

 この論争に進展をみせたのが今年4月に入ってからだ。

 エルサレムの地質学者アリエ・シモンズ氏は、このタルピオットの墓こそがイエスとその妻マリア、息子ユダのための墓である科学的証拠をみつけたという。これには、2007年にジェームズ・キャメロンが監督した映画『The Lost Tomb of Jesus』が深く関わっている。

 この映画では、タルピオットで発見されたイエスの骨が入っているとみられる「納骨堂」(骨箱)が計9つ発見された。それらには日付が刻まれており、それぞれ「マリアとイエスが結婚した日」、「マリアがユダを生んだ日」と一致し、「イエスが復活したはずがないこと」を証明する筋書きで撮影・公開された。

 当時、この箱の数や刻まれている名前、記録、日付は旧約聖書に非常に忠実であったため多くの議論を招いた。さらに、科学的な観点からシモンズ博士はジェームズ・キャメロンらの説を補うべく切り込んだ。それが、碑石を覆う「特徴的な鉱物」にあった。

 地質学者であるシモンズ博士は、それぞれの納骨堂(骨箱)の内部からサンプルを採取。地質学的解析から、これらの箱にはある特定の貴重なミネラル成分などが含まれており、ほぼ同じ時代、同じ場所で採取した粘土から作られている、という結論に至ったという。


■「もっとテストを重ねる必要がある」という批判も

 こうなると、古くからの伝説を信じる人々にとっては寝耳に水の話になってしまう。イエスが十字架にかけられ3日後に復活したことを祝う「イースター」が、“科学”の名の下において無意味になってしまうではないか……。

 実際、この発表のあとシモンズ博士のところには多くの批判的意見が届いた。キリスト教に関するものなら何でも集めるというコレクターのゴラン氏もまたその一人だった。

 ゴラン氏は1980年、このタルピオットの墓が発見されるよりも前である1976年の“無銘時代”にこの墓を購入していた人物である。80年に調査団が立ち入った際も、また今回シモンズ博士に調査の許可を下したのもこのゴラン氏であった。しかしゴラン氏は、今回のシモンズ博士の調査結果には懐疑的な意見を述べているという。

「科学が正しい場合であっても、この納骨堂はタルピオットとは別の場所から動かされた可能性があり、研究はもっと広範囲にテストを重ねる必要がある…(中略)…この結果は非常に興味深いが、何かを決定するのには十分ではない。シモンズ博士は、今後少なくとも200~300のサンプルを採取・解析する必要があるだろう」(ゴラン氏)

 正直、キリスト教徒の少ない日本でこの話題を取り上げたところで、ピンとくる人や血相を変えて飛びつく人はそう多くはないだろう。しかし、キリスト教徒の多い欧米各国などでは現在この話題はかなりの論争を生んでいるのだという。

 それほどまでに、冒頭でも述べた「イエス・キリスト」という唯一無二の「主」の存在や旧約聖書の顛末に関わるこの墓については、ゴラン氏の言う通り、いくら科学で証明されそうだとはいえ、それだけで片付けられるほど単純な話ではないということだ。

 イエスは復活したのか、しなかったのか? はたまた、このエルサレム・タルピオットの墓は本当に彼と家族の墓なのか? 科学的知見よりもあなた自身の篤信が定めるべきところといえそうだ。
(文=ODACHIN)

参考:「New York Times」、「The Independent」ほか

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