「いつ命を落とすかもわからん」軍艦島と朝鮮人強制労働 ― 集落で語り継がれる奇妙な話

「その昔、端島(軍艦島)で働いとった労働者は、大変な重労働をさせられておったとよね。タコ部屋のようなところに押し込まれよって、ロクに食べるもんもなかような状態で、寝る間もなく働かされておったとよ。作業をさせられていたのは、海底奥深くにある作業現場よ。石炭を掘るためには、何キロも炭車に乗って行かなければならんとこバイ。言ってみれば、かなり危険な場所よね。そこがいつ落盤するかわからんし、いつ命を落とすかもわからんようなとこよ…」

「そげんな労働者は、“島抜け”をして来よったとよね。端島から長崎半島までは4kmくらいの距離よ。そこを泳いで渡ってくるとよね。端島は外海ばってん、周りの潮流は早かとよ。力尽きたもんは、そのまま潮に流されたり、A集落にある岩場に打ち上げられたりしてたとよ。その集落じゃ、遺体が流れ着きよると、その場所で荼毘に伏していたとよね。流木を集めてきたりしてね。戦前の話いうから朝鮮から来ていた労働者じゃなかとかね。でも、集落の者は口をつぐんどって何も話さなかとよ…」

 これらの話をしてくれたのは、70代になる老人だ。戦前の話となると、この人たちがまだ子どもの頃の出来事となる。それでも、しっかりと覚えている。

 A集落から数km離れたところにある南越という集落には、『南越名海難者無縁仏之碑』と書かれている石碑がある。これは、この集落に流れ着いて亡くなった朝鮮人を慰めるために建てられたものだ。一説によると、石碑の下には、朝鮮人の遺骨が埋葬されているという。

 ユネスコの世界文化遺産登録発表まで余すところ2カ月ちょっと。日本に世界文化遺産がまたひとつ増えることは喜ばしいことだが、無縁仏となった人たちのためにも、しっかりとした供養をしてゆく必要があるのではないだろうか。

※1 イコモスは、その名称を『明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業』に変更することを求めている

※2 2014年7月10日に最接近した台風8号の影響により同島の南東部にある220メートルの観光遊歩道と、観光上陸の際に使用している桟橋(通称・ドルフィン桟橋)が損傷。1カ月あまり観光上陸ができなかったことにより、この年は、前年度に比べて観光客数が減少している。

※3 大浦天主堂や出津教会堂などを含む14の構成資産は、『長崎の教会群とキリスト教関連遺産』として2016年のユネスコの世界文化遺産登録を目指している。

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