佐藤信太郎撮影:浅草2011『東京|天空樹』より
■何度でも、永遠に楽しめる作品を求めて
――「東京|天空樹」も超・高解像度で美しい作品ですね。「非常階段」とは全然違う爽やかな雰囲気。
『東京|天空樹』(青幻舎)
佐藤 ひとつの場所に対して、たとえば10数枚と分割撮影し、合成することで、細かい部分が見えるような超・高解像度パノラマ作品が撮りたかったんだ。いわゆる「スティッチ」と呼ばれる撮影法だね。この撮影法だと、カメラの動きに合わせて行動をともにした人物が、ひとつの作品の中に何度も写り込むことがあるんだけど、それも見所のひとつ。刺激を受けたのは、平安時代末期の絵巻物『信貴山縁起絵巻』の中でも使用されていた、同一画面内に同一人物が複数回登場して、その間の時間的推移が示されている「異時同図法」。あと、江戸東京博物館で開催された『隅田川展』でみた浮世絵作品だね。横長の画面にびっしり細部まで絵が描き込まれていて、ひとつの作品で何度も何度もぐるぐる見回してしまったんだ。ずっと見ていても飽きない面白さに衝撃と感動を受けて、自分の制作に対する感覚と強くシンクロしてしまった。日本の古典的なアート作品に影響されながら、それを最新のカメラでそして、最新の技術で表現したいと思いながら作ったのが『天空樹』です。
――今後はどのような作品を予定されていますか?
佐藤 仕事に関しては、建築家が作る建物を撮りたいという気持ちがある。実用・生活・アートが詰まっているから、撮っていて面白いと思う。特に、狭小住宅は面白い。限られた空間の中で、表現する……。湯水のようにおカネを使って好きなように作ると意外と平凡な物ができるが、制限があると面白いものができるから。作品に関してはまだ未定だけど、細部にこだわった作品を作っていくと思います。
(取材・文=編集部)
■佐藤信太郎(さとう・しんたろう)
1969年東京生まれ。1992年東京綜合写真専門学校卒業。1995年早稲田大学第一文学部卒業、共同通信社入社。2001年共同通信社退社。2002年からフリー。2009年日本写真協会賞新人賞。千葉市芸術文化新人賞。2012年林忠彦賞。写真集に『夜光』『非常階段東京―TOKYO TWILIGHT ZONE』『東京|天空樹』(すべて青幻舎)がある。
http://sato-shintaro.com/
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