2020年東京五輪エンブレムに盗作疑惑が浮上!! 使用差し止めや損害賠償の可能性は?
「エンブレムを見た人の感想は『確かに似ている』『偶然じゃない?』などさまざまですが、法律上の判断はそれだけではありません。
まず、著作物には国境はなく、世界の各国が条約を締結して、お互いの国で生まれた著作物とこれに関わる著作権を保護しています。
『ベルギーの劇場のロゴ』はこれを創作した『フランスのデザイン会社』が著作権を有しているところ、『文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約』という名前の条約によって、その国(フランス)と、条約同盟国(日本)において、その国(フランス)が与えている権利と同じ内容の保護が与えられることになります。
具体的には、『保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法は、この条約の規定によるほか、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる(条約5条(2))』ので、日本の著作権法が適用されることになります。
その結果、『フランスのデザイン会社』は、この条約と日本の著作権法に基づき、使用の差し止め請求や損害賠償請求ができることになります。また、『フランスのデザイン会社』が望めば(親告すれば)刑事告訴も可能となります。
では、ところで、今回のエンブレム、『盗用』となるのでしょうか?
似ていれば何でもかんでも『盗用』となるわけではなく、例えば、2つの作品が偶然に一致した場合は『盗用』ではないのです。
あくまで、他人の著作物を『利用して作品を作出すること(依拠すること)』が『盗用』となるわけですが、過去の判例が、『既存の著作物に接する機会がなく、従って、その存在、内容を知らなかった』場合は『盗用』の可能性は極めて低いとしているように、もともとの著作物に接するチャンスがあったかどうかを“依拠しているかどうか”のメルクマールとしています。
『東京オリンピックエンブレム』を創作した方が、どこかで『ベルギーの劇場のロゴ』を見ていた場合には、“依拠している”かもしれません。
しかし、“依拠している”なら、常に著作権侵害となるわけではありません。
判例は、複製権侵害や翻案権侵害にすら該当しない場合、すなわち、「もともとの著作物を修正し、増減した別の著作物に新しい創作性が認められ、かつ、もともとの著作物の表現形式の本質的な特徴が失われてしまっている場合」には、著作権(複製権、翻案権)侵害とならないとしています。
要するに、『確かに、ちょっと参考にした(依拠した)けど、もともとの著作物の本質的な点が変更されているから、全く別の著作物になっている』場合は、侵害ではないということです。
今回の「東京オリンピックエンブレム」ですが、双方、「正方形を彷彿させる図形の中に、直径が同じ円のシルエットと、長辺が同じ長方形を配置している」ところまではほぼ同一ですが、カラー、右上の赤丸の有無、さらなる外枠の円の有無などが異なるので、「全く別の著作物になっている」と言えるのではないでしょうか。
なお、仮に著作権侵害が認められてしまったら、オリンピック委員会や東京都等は使用差し止めや損害賠償をくらいますし、『東京オリンピックエンブレム』を創作した方や関係者は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科せられる可能性もありますし、法人として使用している場合は3億円以下の罰金の可能性もありますので、大変なことになってしまうでしょうね」
五輪の父として知られるクーベルタンは「参加することに意義がある」と説いたが、東京五輪の行く末や、いかに…。
(文=山田田中)
協力:弁護士山岸純、弁護士榎本啓祐/弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP
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