撮影:萩原雄太
ローマ時代からの長い歴史を有するパリでは、18世紀になると市内に遺体を埋葬するための墓地がなくなり、衛生環境が悪化してしまう。そのため、それまでにつくられた墓を掘り返し、遺骨を採石場として穴を掘られた地下道に集める計画が進行された。そうして生み出された奇妙な空間が、この「カタコンブ・ド・パリ」なのだ。
撮影:萩原雄太
5ユーロ(約680円)の入場料を支払って、地下深くまで続く狭い螺旋階段を降りて行くと、そこには人がひとり通るのがやっとの薄暗い地下道が広がっている。真夏でも気温はおよそ14度。天井や壁からは地下水が染み出し、空間を満たすひんやりとした空気はここが異世界への入り口であることを強く意識させる。地下道の各所には、石に彫られた祭壇や、坑夫のための井戸などが設置されており、第二次大戦中には、レジスタンスの隠れ家としても利用されていたという。外の喧騒とは全く異なったこの地下道を歩いているだけで、パリの華やかな日常とはかけはなれた不思議な感覚を味わうことができる。