『家畜人ヤプー』全権代理人・康芳夫が遂に映画化計画を激白!『永遠の0』『絶歌』にも物申す!!

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 そしてこの偏りと皮肉に満ちた唯一無二の世界観は、フランスでも、今評価を受けているという。

「フランスでは出してますよ。ヨーロッパのほかの地でも、いろいろなところで移民の問題が社会問題化しているから、ヤプーの世界観に実感として共感できるんじゃないでしょうか。三島(由紀夫)がこの本を推薦し、大絶賛した大きな理由は、彼のテーマである白人対黄色人種に重なる部分があったからでしょう。まさにそのことについて大きく触れた作品だからですよね。そこが三島の感動というか、インタレストを呼んだわけですよ。言ってみれば、彼が産みの親、育ての親でしょうね」

 『家畜人ヤプー』という得体の知れない変態的な作品を世に知らしめたのは、由紀夫だった。

「そういう意味では彼に非常に感謝しています」

――作者不詳のギミックも彼が仕掛けたんですか?

「そもそも、僕が経営していた出版社で出していたSM雑誌『血と薔薇』の本当の意味でのプロデューサーは三島由紀夫なの。かつ『家畜人ヤプー』もね。『家畜人ヤプー』は『奇譚クラブ』っていうSM専門誌に連載されてたんだけど、誰にも作者はわからない。版元のオーナーは知っていたんだけどね。我々は沼正三に連絡を取れないから、大阪のオーナーのところに乗り込んだの。彼はSMになんにも興味のない大金持ちだった。関西人ってそういうスポンサー的な人がいっぱいいますよね。そこで彼に信用されて、沼(正三)さんに連絡がとれたの。今はもう沼さんは亡くなってしまいましたが、僕が『家畜人ヤプー』の全権代理人です。誰が沼正三であるか知ってるのは僕だけ。今まで法的なトラブルも何も起きていないです」

――人種関係であるとか、宗教であるとか、現代の日本社会でやりにくくなっているテーマですよね。それがエンターテインメントに関しては特に足枷になっているようにも思えます。

「確かにそうですね。ただ、今もう一度『家畜人ヤプー』を出そうと思ったとしたら? そこまで大変ではないでしょう。みんな勉強してないし(笑)」

――かつては右翼的な人でさえおもしろがってくれるという土壌があったわけじゃないですか?

「だから不思議なんですよ。いまで言えば美智子さまとか平成天皇とかがみんな性的奴隷になるわけですよ。そもそも、天照大神がアナテラスオオミカミなんですし」

 そのような危険に満ちた作品というだけあって、現在も過去も、映画化の権利をめぐって康芳夫を訪ねる人間は後を絶たない。

「映画化に関して言えばね、(スタンリー・)キューブリックの代理人に何度も会いましたよ」

――そういえば、最後の監督作『アイズ・ワイド・シャット』のテーマもモラルを超えたセックスについてでした。

「あれは失敗作ですけど、彼らしい映画でしたね。きっとあの延長線上で変態路線を畳みかけようとしてたんだと思いますよ」

 しかし、壮大なスケールと難解な世界観のためか、今に至るまで誰もその映画化を成し遂げたものはいない。映画化権の売上は、その都度康の元に入り続けているのだが……。
 
「『家畜人ヤプー』の映画化を今本気でやりたがっているのが熊切(和嘉)くん。もうひとり今低予算でやろうとしているのが葉山陽一郎くん。これが進行してるんですよ」

――今までいろいろな方が権利を買ってきた中で、初めて実現しそうということですか?

「今までで一番最初に権利を買ったのは大阪芸大の教授やってる中島貞夫。もう50年前だよ。ここで奇妙なのは、彼が大阪芸大の映画学部長になって第1回の教え子が熊切くんなんだよ。お互いにビックリしちゃってね。あと何人か来て、今やってるのはその葉山くん。契約金の一部を払ったので、すでに制作状態に入っています」

――長谷川和彦監督にも権利を売ったそうですね。

「彼の場合は熊切くんの前だったかな。僕の大学の後輩でもあるし、こちらからけしかけた部分もあるんだけど……。長谷川君の場合は、現実的にはなにもおこらなかった」

――全員で何人に売ったんですか?

4人ですね、アニメ含めて

 権利は売れるが、ものはできない。まさかそこまでが康芳夫の目論見とも思えないが、どこまで本当かわからないのもいかにも康芳夫的な話である。

「昔、戸川純って女の子がいてね……」

――ヤプーズですよね?

「そうそう、あれは俺に黙って使ってたから止めさせたんだ」

――えーっ!? そうだったんですか!

「“勝手に使うな”って言ったら謝ってきてね」

 ヤプーの全権代理人としての仕事は、多岐にわたっているようだ。


■康芳夫という生き方

――康さんは元々何になりたかったんですか?

「なんでもいいんですよ、一切が『無』だ。どうせ退屈な人生、いつ死ぬかわからないんだから」


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