弱きを助け強きを挫く! 原発裁判を闘う凄腕弁護士・河合弘之という男
■ひとり原発に反対する人の味方に
青森県下北郡に建設中であった大間原発に反対していたのは、亡くなった熊谷あさ子さんとその家族だけ。それ以外の住民は皆、賛成だった。孤立無援の状況の中、熊谷さんに河合氏が手を差し伸べる。そして、河合氏が目を付けたのは、大間原発から30キロメートル圏内にかかる対岸の北海道函館だった。大間原発が事故を起こせば、函館も放射能の被害を受ける可能性は大きい。2010年7月、函館の市民168人が、国と事業主の電源開発を相手取り、建設差し止めを求める訴訟を起こした。
全国で原発訴訟を起こしているが、大きな経済事件で辣腕を振るった河合氏でさえ、20年間以上負け続けてきた。しかし、3.11の福島原発事故後、その流れが変わった。
「変わったのは、3.11があったから。原発の安全神話が目の前で崩れ去ったから、裁判官も目覚めた。自分たちが頑張ってきたからというわけじゃない」
そう言って自分の功績を否定する河合氏だが、それまで地道に撒かれてきた種が実ってきたのは、明らかだ。
その顕著な例が、函館だ。工藤壽樹・函館市長が大間原発建設反対を明言し、函館市が主体となって建設差し止めを求める訴訟を起こすに至った。市民の声が自治体を動かした形だ。原発をめぐって、自治体が国を提訴したのは、これが初めてである。
また2014年5月21日には、福井地裁で、大飯原発の差し止めを求める訴訟の判決が出され、勝訴した。さらに今年の4月14日には、同じく福井地裁で、高浜原発3、4号機を稼働してはならないという仮処分決定命令も出ている。だが一方、4月22日には、鹿児島地裁で、川内原発1、2号機の稼働差し止めの仮処分申し立てが却下されるなど、逆の事例があるのも事実だ。
しかし、今回の検察審査会による東電元幹部の強制起訴決定を見ても、司法の世界で原発の危険性が認識されてきたのは確かだろう。
河合氏の活動は、自らが監督となって、映画『日本と原発』を作るにまで至っている。原発は、科学、政治、経済、社会、法律と問題が多岐に渡っているが、映画の中でそれがひとつに繋がっている。脱原発を訴えるには決定版と言えるだろう。音楽を担当しているのは、新垣隆。現在も各地で上映会が開かれている。
(文=深笛義也)
■深笛義也(ふかぶえ・よしなり)
1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。18歳から29歳まで革命運動に明け暮れ、30代でライターになる。書籍には『エロか?革命か?それが問題だ!』『女性死刑囚』『労働貴族』(すべて鹿砦社)がある。ほか、著書はコチラ。
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2024.10.02 20:00心霊弱きを助け強きを挫く! 原発裁判を闘う凄腕弁護士・河合弘之という男のページです。原発、弁護士、河合弘之などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで