【本庄保険金殺人】“嘘つき情報源”の発言を垂れ流したマスコミを直撃! 「無実」を訴える死刑囚・八木茂と事件の真相!!
■太田出版に問い合わせた、すると…
さらに取材を進めると、実は建脇氏の著書『虫けら以下』を発行した太田出版ですら、建脇氏に疑いの目を向けていたことがわかった。筆者が「この本は嘘が多いと思うので、著者に取材させてほしい」と同社に申し入れたところ、担当者は「出版後、著者(建脇氏)と接点がなく、今は連絡先も不明なんです」と言いつつ、出版の内実をこう明かしたのだ。
「実は本を出す時もそういう(=噓が多いのではないかという)懸念はあったんです。ただ、当時はすでに(八木死刑囚が)刑務所に入っている状態で、反証がとれなかった。そこで著者の意向をそのまま掲載した格好だったんです」
この事件の捜査段階のマスコミ報道は、こんな怪しげな人物が情報源になっていたのである。前編で紹介したように「虚構」が多かったのも必然の結果だったのだ。
■「被害者」たちは実は……
確定判決では、八木死刑囚は保険金詐取目的で3人の男性を殺傷したとされている。そのうち、1995年にトリカブトで毒殺されたとされる元工員、佐藤修一氏(当時45)は、実際には川で「自殺」していたことをあらゆる客観的証拠が示しているのは前編で紹介した通りだ。
一方、残る2人の被害者、元パチンコ店従業員の森田(旧姓・関)昭氏(当時61)と元塗装工の川村富士美氏(同37~38)は1998年の夏頃から9~10カ月に渡り、連日、八木死刑囚の愛人女性から大量の風邪薬や酒を飲まされ続け、森田氏は風邪薬の副作用で死亡、川村氏は急性肝障害などの傷害を負ったとされている。当時は「風邪薬を凶器に使った前代未聞の殺人」とセンセーショナルに報道されたものだった。
しかし、八木死刑囚の裁判では、この2人の事件に関しても重大な疑問が浮上している。そもそも、本当に風邪薬で人が殺せるのか、という疑問である。
というのも、確定判決では、風邪薬に含まれるアセトアミノフェンという成分の副作用により、2人は「好中球減少症」に陥って抵抗力が低下し、体調を悪化させたとされている。だが、現実には、アセトアミノフェンの副作用でそのような事態に陥る可能性は0.1%未満だというのだ。
「げんに裁判では、何人もの医師や研究者が証言しましたが、アセトアミノフェンによって好中球減少症が発症した症例を体験した人は1人もいませんでした」(松山弁護士)
そして、実はこの2人の被害者、森田氏と川村氏については、捜査の中で意外な事実が判明していた。森田氏は頭髪、川村氏は血液から「ある物質」が検出されていたのだ。
それは、フェニルメチルアミノプロパン――。すなわち、覚せい剤である。要するに、「被害者」とされているこの2人の男性は、覚せい剤中毒だったのだ。
覚せい剤を過剰に摂取すれば、体調は悪くなる。場合によっては、死ぬこともある。当たり前のことだ。にもかかわらず、実は八木死刑囚の裁判では、検察側から森田氏、川村氏の体調悪化の原因が覚せい剤であることを否定する証拠は一切示されていない。そして、0.1%未満の可能性しかない「風邪薬を使った殺人」がこの事件の真相だったことにされているのだ。
ちなみに確定判決では、2人が覚せい剤中毒に陥った事情について、八木死刑囚が飲み物に覚せい剤を混ぜ、2人に与えていたからだと認定されている。しかし一方で、八木死刑囚は犯行が発覚しないように風邪薬と酒を凶器として使い、病死に見せかけるために長い時間をかけてジワジワと計画を進めたことにされており、辻褄が合っていない。
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