BankART 入口
異文化への接触。それはいつの時代でも特別な体験だ。外国旅行から帰国し、親しい友人や家族と再会する。すると私たちは、旅の疲れも忘れ、興奮気味に話し始める――初めて口にした料理、美しい風景や習俗、あるいはちょっとしたハプニングなどなど。そうやって私たちは体験を共有する。しかし、その旅行者が芸術家であった場合、土産話だけで済ませるわけにはいかない。なぜなら彼らは、旅行で得られた知見を自身の創作に生かさなければならないからだ。
我が国においても、画家の梅原龍三郎や文学者の永井荷風をはじめ、数多くの芸術家が海外生活の経験を自身の創作活動に生かしてきた。では、芸術家は旅先で何を見て、何を感じ取るのか。彼らと一般の旅行者は、どう違うのか。これはなかなか興味深い問いである。
それを伺い知る絶好の機会が、現在「BankART Studio NYK」で開催されている「アートと都市を巡る横浜と台北」展である。本展は、日本と台湾両国合わせて21人の作家が参加する美術展覧会であると同時に、2005年以来横浜市と台北市が協働して取り組んできた「芸術家交流事業」の成果発表の場でもある。「芸術家交流事業」とは、いわば交換留学のアーティスト版で、横浜市と台北市で選抜された作家が、それぞれBankART(横浜市)と台北国際芸術村(台北市)に交換派遣され、3カ月間にわたり滞在制作を行うものである。つまり本展では、日本人作家の台北滞在記、そして台湾人作家の横浜滞在記の双方を、視覚芸術という形を通して追体験できるのだ。
ではさっそく、作品を見てみよう。