「BankART Studio NYK」のテラスからのぞむ横浜港。鑑賞後はビールを片手に名物のパテを楽しみたい。
時に、芸術家は私たちが思いもよらないものに着目するものだ。私たちには“当たり前”に見える「幟旗」も、許喬彥にとってはそうではなかった。当然のようにスーパーで売られている「バナナ」も然り、「外国語辞典」も然り。芸術家が何を見ているかを知ること、また、そこから芸術を創造する過程を垣間見ることは、ただ私たちの好奇心を満たすだけではない。それは、「あたりまえさ」に満ち満ちた私たちの日常を異なる視座から見つめ直す機会でもある。
ここまで3人の作品を見てきたが、紹介した作品の他にも本展には見どころが多々あり、見飽きることがない(筆者は鑑賞に3時間も費やしてしまったほどだ)。たとえば、都市空間を題材にした賴珮瑜(Lai Pei-Yu)の映像作品《もうひとつの空―流星》は出色の出来であるし、プールをモチーフにした幸田千依のペインティング作品《Perspective》は、その水色が重厚な展示空間に映えて美しいことこの上ない。これらの作品は、ぜひみなさんの眼で楽しんでいただきたい。
(取材・文=斉藤 誠)
■「アートと都市を巡る横浜と台北」展
会場:BankART Studio NYK 横浜市中区海岸通3-9
会期:2015年7月24日~9月13日
時間:11:00~19:00 ※最終日は17時まで
HP:http://www.bankart1929.com/
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