都会を離れアルプスの山で“ヤギになった”男!! 「気分が落ち着くし、友達もできた」
■ヤギたちが“仲間”と認めた瞬間
出足から予想以上の困難が続いていたが、スウェイツ氏は次第に“前足”の動かし方に慣れ、ある程度速く四足で歩けるようになったという。
ある時、牧草地で他のヤギが草を食むのに夢中になっている中、これまで群れの最後尾にいがちだったスウェイツ氏は、一気に先頭まで歩き、さらに山の斜面を登って見晴らしの良い峰に辿り着いた。そして辺りの壮大な景観を眺めた後、ヤギの群れを見下ろしてみると、なんとヤギたちは草を食むのを止め、一斉にスウェイツ氏を見上げていたというのだ。
「ボクのような“新入り”が、群れの先頭に立ってみんなを見下ろすことは、ヤギの社会の中ではおそらく無礼なことなんでしょうね。このとき、痛いほどヤギたちの視線を感じました」(トーマス・スウェイツ氏)
この時、ヤギのツノが意外にも鋭いことに改めて気づき、恐怖すら感じたというが、この出来事の後でヤギたちの彼を見る目が明らかに変わったという。
「(あの出来事の後に)幸運にも、ヤギの友達ができたんですよ」と思い出を振り返るスウェイツ氏は、ヤギたちからも群れの一員と見なされるようになったということだ。群れを管理し、この3日間をつぶさに観察していたヤギ飼いの人物も「ヤギたちはついにスウェイツ氏を受け入れました」と話している。
スウェイツ氏は、ヤギたちと過ごした3日間を「とても興味深い体験でした」と述懐する。なんと群れから外れたあとも、さらに3日間、四足歩行のままヤギとして過ごしたというから、相当ハマってしまったのだろう。彼は現在、この期間に撮影された数々の写真を展示するギャラリーをロンドンで準備しており、またこの体験談を綴った著書『GoatMan(ヤギ男)』の出版も来年春に控えている。
■ヤギになることで気分が落ち着き、生き方がシンプルに
スウェイツ氏は、コンセプト・デザイナーの仕事の一環として、科学技術を用いて人間の身体と認知能力を進化させる「トランスヒューマニズム(Transhumanism)」にも興味を抱いており、自身の仕事のアイデアに生かしてきた経歴を持つ。
「ポストヒューマニズムやトランスヒューマニズムなどの技術は、人間のさまざまな欲望を多様な形で叶えようとしています。しかし私は、多くの人々がなにもスーパーマンにならなくてもいいと考えているんですよ」(トーマス・スウェイツ氏)
米メディア「Motherboard」の取材に対してこう語るスウェイツ氏だが、ではスーパーマンを目指さないトランスヒューマニズムとはどんなものなのか? それは技術を持った“退化”であるという。そして今回、彼はこの考えに基づき、義手や義足を用いて別の生物に“退化”したのである。「人間以外の生物になることで、とても気分が落ち着いて生き方がシンプルになりました」と、この3日間の充実した体験をまさに牛やヤギのように“反芻(はんすう)”している。
都会の中で“迷える羊”のような思いを実感していた氏が、羊ならぬヤギになることで人生観をも変える貴重な体験をしたとは、実に皮肉なものかもしれない!?
(文=仲田しんじ)
参考:「Daily Mail」、「Motherboard」、「トーマス・スウェイツ氏のサイト」ほか
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2024.10.02 20:00心霊都会を離れアルプスの山で“ヤギになった”男!! 「気分が落ち着くし、友達もできた」のページです。ヤギ、義足、仲田しんじ、四足歩行、スイス、トランスヒューマニズムなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで