「佐野はクロじゃない、それより電通を締め上げろ」五輪の裏システムを知る男・康芳夫が東京五輪問題を語る!
1984年、朝日によるロサンゼルス五輪独占放映権獲得騒動が起きた。その渦中にいた男こそ、国際暗黒プロデューサーの康芳夫だ。「五輪の流れなら裏のシステムまで知っている」と語る彼に、一連の五輪騒動は一体どのように映っているのだろうか? 待望の後編は「エンブレム問題と五輪の裏側、そして電通の動き」に迫る。(前編はコチラ)
■佐野氏はネットファシズムに殺された
――では公式エンブレムの盗作問題についてはいかがですか?
康「これは非常に厄介な問題ですね。ただ……僕はね、基本的に、佐野(研二郎)さんは盗作はしてないと思う。非常に難しい問題だけどね」
――康さんの見立てではそうなるということですね。
康「人間の記憶にはね、インプリント(刷り込み)っていう問題がある。それで、オリジナルとして最後に出てきたドイツのアーティストの方は、ホントに似てるわけ」
――ヤン・ヒチョルトの展覧会で使われたロゴの方ですね。最初に上がったベルギーのリエージュ美術館の方はいかがですか?
康「僕はあれは大した問題じゃないと思う。でもドイツの方はもの凄く似てます。酷似してますよ。ただ佐野さんはね、あれを意識的にかっぱらうというようなことは絶対にしてないと思う。もしかっぱらったら、彼だって、国際的に抹殺されるってことはわかってるはずですから」
――現状そのようになりそうですね。
康「オリンピックのロゴで、そんなことやるわけがない。ところがね、オリジナル・デザインが頭にインプリントされていて、無意識に使ってしまう場合がある。これだけ世の中にデザインが溢れていたらね、なににも似ないデザインなんてないですよ。そこにひとつの問題がある」
――あれは、無意識の盗作だったということですか。
康「もう死んじゃったけど、山口洋子って知ってる? 元々は銀座の高級クラブのママをやってた大ヒットメーカーの作詞家で、彼女が作詞した『よこはまたそがれ』って歌が昔大ヒットしたんです(1971年/作曲は平尾昌晃、歌は五木ひろし)。ところが、当時の『週刊文春』でそれがパクリじゃないかって記事が出て、大問題になったの。
この当時の記者は現在『WiLL』の編集長を務める花田紀凱君で、自らのコラムでも大々的に指摘している。ちなみに花田君は今から40年前の、小生が最初に出版した『虚業家宣言』(双葉社)のゴーストライター。今やタカ派を代表する大編集長だけど、当時は文春の社員で、25、6歳のチンピラ記者だった。
彼女は文春を訴えて、やがて和解したんだけど、僕は彼女と付き合いがあったので、ある時こういうふうに彼女が言ってきたの。“もしかしたらあの歌ね、誰かの作詞したフレーズが頭にインプリントされていたのかもしれない”って。そういうことは、大いにあり得るんです。これがそもそもの問題」
――なるほど。
康「ただ、佐野さんは状況的に、サントリーの景品の問題なんかも出てきた。これは一般大衆の感情としては“パクリだ!”ってなる。僕はこれが一種のネットファシズムなんじゃないかと思うけどね。僕は佐野さんとなんの利害関係もないけど、かわいそうだと思う。まあもはや佐野さんに勝ち目はないけどね。つまり、世論=ネットファシズムに殺されたわけだ」
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