【マンション杭打ち不正】首都直下地震で高層ビル倒壊?不正よりも怖い現実
先月中旬に発覚した横浜のマンション「パークシティLaLa」が傾斜していた問題で、杭打ちの二次下請けである旭化成建材によるデータ不正が大きな社会問題となっている。しかも、マスコミ各社が元杭打ち業者などに取材したところ、業界においてデータ不正が日常的に行われていることも判明してきた。首都直下地震などの大地震が都市を襲った場合、高層ビルにこのような杭打ち不正があれば、ビル倒壊などの大惨事が待ち受けているかもしれない。
■横浜は地盤も相当ヤバかった!! それ以上に憂慮すべき場所も?
環境考古学や災害リスクマネジメントを専門とし、地盤と地震の関係について長年研究してきた高橋学・立命館大学教授については、過去の記事でも紹介した。高橋氏は、阪神淡路大震災で倒壊した建物があった土地の地盤を調査し、その大半が「旧河道」、すなわち昔は川だった場所であることが判明した。このように、大地震発生時には地盤の良し悪しが生死を決定づける大きな要因となる。
高橋氏によれば、杭打ち工事は「杭の長さが長くなればなるほど、お金も作業時間も倍以上になります。さらに近所からの騒音に対する苦情も多いため、不正に走る会社は少なくないのです」(日刊ゲンダイ、2015年10月21日)という。
また、杭打ち不正が発覚した横浜の「パークシティLaLa」が建つ場所は、2万年前の氷河期に深い谷が形成され、そこに縄文時代に海水が侵入したことでプリンのように柔らかい粘土が溜まっている土地だという。つまり、洪水や地震に弱い湿田、すなわち軟弱地盤だったというわけだ。東京23区も縄文時代は海だった土地が多いうえ、かつて川だった土地が埋め立てられた場所も多い。軟弱地盤の層は地下30~50mの深さにまで及び、かなり深く杭を打ち込む必要があるという。
高橋氏は、基本的に高層ビルでは支持層まで到達する杭打ちなどの耐震化が徹底されており、そのような対策がなされていない中層ビルよりも却って安全性が高いという。実際、阪神淡路大震災や東日本大震災でも、高層ビルは倒壊せず、むしろ中層ビルの方が倒壊などの大きな被害を受けた。
しかし、高層ビルや高層マンションが安全というのは、データ改ざんなどの不正がなく、支持層まで杭が打たれているという前提があってこその話だろう。いつ起きてもおかしくないとされる首都直下地震に見舞われたとき、液状化現象が心配される都心のウォーターフロントに建つ高層ビルやマンションで、もしも杭打ちの不正があったとすればどうなるだろうか? 最悪の場合、ビル倒壊の可能性もあるのではないか。大地震発生時に懸念される液状化現象への対策は、杭打ちである程度は可能とされるが、杭が折れたり、建物の下の土が流されて空洞になったりした結果として傾く可能性も残されており、たとえ不正がなかったとしても絶対に安全とは言い切れないようだ。
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