一組の夫婦以外誰もいない村 ― 静寂の中で45年、たった2人だけの切なく美しい人生=スペイン
■運命の出会いが変えた2人の人生
内戦後のある日、牧草地から牛を運んで来た村に残った数少ない若者のシンフォローサさんに、同じく農場へ牛を運びに行ったマーティンさんは出会った。
そしてその後2人は村に2軒しかない小さなレストランで再び出会い恋に落ち、そして結婚したのだ。夫妻はその後も村に残り家庭を築いた。多くの住民が仕事を探して村を去っても尚、夫妻は村に留まる事を選んだ。
その原因のひとつには、夫妻の娘の死が挙げられるだろう。悲しいことに夫妻の娘は、血管やリンパ管の中に異物が詰まり循環障害を起こす「塞栓症」を患い、12歳の若さで他界してしまった。マーティンさんは「病院に着いた時、娘はまだ生きていましたが輸血をしても出血する速度や量がそれを上回り、娘は助かりませんでした。生きていれば娘は48歳です」と語った。
夫妻はこの地に眠る娘さんと共に生きようとしているのだろうか。そしてそんな暮らしを夫妻は幸せだと感じているようだ。夫妻は自分たちが村で最後の住民になっても、村を離れた事は一度もなかったのだ。
「多くの人が、私たちの暮らしぶりを褒めてくれますが、私は彼らに“実際にここへ来て住んでごらんなさい。どれだけの間あなたが耐えられるか”と言います。私たちがここに住み続けるのは妻がここで生まれ育ち、ここにいたいと言ったからです。もしも私に選択する権利があったとしたら私たちはとうの昔にこの村を去っていたでしょう。ですが妻をここに1人で残して行く事はできません。他に何ができたでしょう?」とマーティンさんは言う。
奇しくもマーティンさん自身は望んで村に残ったわけではないようだが、愛する妻とこの地に眠る娘に寄り添い、静かに暮らしている。
現在、マーティンさんは79歳、シンフォローサさんは82歳と高齢だが2人は電話やテレビ、電気と水道のない環境でラジオだけを情報源にして暮らしている。古い車で時折、25km離れた町へ行く事はあるもののそれ以外はほぼ、外界との接触はないようだ。動物の世話やチェリーの木の手入れと、やる事は尽きないそうで週末になると訪問者もあると言う。
■「羨ましい」「理想の暮らしだ!」賞賛や羨望の声多数
マーティンさん夫妻の暮らしぶりを報じた記事を読んだ人々のコメントの多くは驚いた事にとても好意的であり、できるならば自らも彼らのように暮らしたいと願っている人が多いようだ。その一部を見てみると、
「何て素晴らしい暮らしなんだ。これぞ“至福の時”だろうね」
「現代社会と人間に疲れたよ。こんな風に暮らしたいものだ」
「この2人が羨ましいよ。こうして暮らせる場所はないものだろうか」
「平和と静寂にあふれているんだろうな」
「インターネットさえあればこの環境は僕にとって天国になるよ」
など、肯定的であり、特に近所づきあいや会社内などの人間関係に疲れている人々には夫妻の様な暮らしがより魅力的に見えるようだ。殺伐とした世の中で心身をすり減らしながら生きるのならば、こうして愛する人と共に静かに暮らしてゆくのも悪くはないのかもしれない。
(文=清水ミロ)
参考:「Oddity Central」、「Daily Mail」ほか
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2024.10.02 20:00心霊一組の夫婦以外誰もいない村 ― 静寂の中で45年、たった2人だけの切なく美しい人生=スペインのページです。カップル、清水ミロ、限界集落、廃村、自給自足、ラ・エストレージャなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで