酒癖の悪さは遺伝子のせいだった?治療で改善できる可能性も!

 セロトニンは、ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心を平静に整える作用のある伝達物質で、セロトニンが不足すると精神のバランスが崩れ、暴力的になったり、うつ病を発症するともいわれてる。そして体内で分泌されたセロトニンを取り込むセロトニン受容体は現在知られている限りでは11あるが、この中のセロトニン2B受容体が変異するなどして機能が阻害されると、どうやら“酒に飲まれる”ようなのだ。

 ということは酒グセが悪く失敗ばかりしている人に反省を求めても仕方がないという話になる。もちろん禁酒することがベストなのだろうが、酒好きならなかなかそういうわけにもいかないだろう。酒量を減らすか、酒の席への参加を控えることが考えられるが、精神科的な治療で改善できる可能性もあるとティッカネン博士は示唆している。

■フィンランド人は酒グセが悪い!?

 この研究がフィンランドで行われたというのも、実はとても示唆に富んでいることであるという。日本人にしてみればあまりピンとこないが、ヨーロッパではフィンランド人の酒グセの悪さはけっこう有名なことらしい。そして実際、フィンランド人にはセロトニン2B受容体が遺伝子変異を起している割合が高いというのだ。

 同じくヘルシンキ大学のマッチ・ウィッコネン教授が長年をかけて収集したフィンランド人の遺伝子情報を分析したところ、人口の2.2%にもあたる10万人以上のフィンランド人にセロトニン2B受容体の異変が認められているという。これは他の国の人口比の平均と比較して3倍にもなるということだ。フィンランドは歴史的に民族が孤立していた時期が長く、この遺伝子的な特徴が今日にもフィンランド人に受け継がれているのだとティッカネン博士は考えている。

 ともあれ、これまでよくわかっていなかったセロトニン2B受容体の役割が、多少であれ解明されたことは画期的なことであり、各種の新薬の開発に新たな可能性をもたらすものになるということだ。今回の研究などによって将来、酒で失敗する人が減るのは社会的には大歓迎すべきことだが、“一夜の過ち”の機会が減ることをうれしく思わないロマンチストもいたりして!?
(文=仲田しんじ)


参考:「Mirror」、「ヘルシンキ大学」、ほか

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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