千倍の重さの物体を持ち上げることができるスーパーポリマーがファッションや医療に大革命を起こす!
大学の研究室で誕生した新素材が、医療やファッション業界に革命を巻き起こす!? 学術誌に掲載された形状記憶ポリマーの驚くべき特徴を、海外メディアが取材した。
■形状記憶技術とは?
形状記憶をもつ製品は、いまや我々の生活に溶け込みつつある。最も身近な例としては、高級なメガネのフレームだろうか。うっかり押しつぶしたり、ツルがねじれてしまったりしても、強い復元力であるべき形が保たれる。
ここまでは、“形状記憶=強くて丈夫”という印象だが、この復元力は特定の温度下のみでしか生まれない。メガネでいえば0℃~40℃の常温での使用というった条件が設定されていて、40℃を超えて加熱してから折り曲げると、それからはずっと折れ曲がったままになる。
このように、温度の変化と密接に関係しているのが、一般的な形状記憶技術なのだ。
■低温でも復元力を発揮
今年1月、米ロチェスター大学が発表した新型の“スーパーポリマー”も、やはり温度の変化をカギとしている。
ただし、単に温度変化によって形を変えるポリマーというのは、今ではさほど目新しい存在ではない。スーパーポリマーのとりわけすぐれた特徴は、普段は自在に形を変えることができ、ヒトの体温に近い“35℃”という低温でもとの形に戻ることができる点だ。
研究チームのリーダーであり、同大学の教授でもあるミッチ・アンターマッテン氏は、その特徴について、「我々の形状記憶ポリマーは、新しい形にとどめておけるゴムバンドのようなものです」とわかりやすく表現している。
研究では主に、ポリマーを構成する分子間の結びつきと、結晶化プロセスの解明が図られた。その結果、材料の安定性を調節し、形状を変化させる温度を正確に設定することが可能となったのだという。
■エネルギーを保存できる利点も
しかし、アンターマッテン氏によれば、形状を変化させる温度を正確に設定することは、あくまで研究の目的のひとつに過ぎないという。今回、彼と研究チームが注目したのは、ポリマーがもとあった形へと戻る際に生み出されるエネルギーの存在だ。
「形状記憶ポリマーを利用するものの、大半は、周囲のものを押したり引っ張ったりすることになるんです。ですが、今日まで研究者はポリマーの物理的な働きについて、ほとんど評価することはありませんでした」と、アンターマッテン氏は語る。
ここで、ロチェスター大学が公開している動画を確認してみよう。動画では、ポリマーの収縮によっておもちゃのトラックが斜面を登ってゆく様子や、プラスチックのブロックが引き上げられていく様子が観察できる。
スーパーポリマーは復元時、自己の質量の1000倍にあたる重量物を持ち上げることができる。そのため、たった数グラムの靴ひもサイズのポリマーでさえ、2リットル入りのソーダのペットボトルを持ち上げることができてしまう。
体温で変形し、豊富な弾性エネルギーを保存することができるスーパーポリマーには、手術用の縫合糸や人工皮膚、体型にフィットする衣料品など、さまざまな用途での活用が期待されている。
新しい技術や製品が、めまぐるしく日常を塗り替えてゆく今日。ひょっとするとスーパーポリマーも、わずか数年のうちに、私たちの生活に欠かせない存在になるのかもしれない。
(文=Forest)
参考:「Daily Mail」、ほか
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