障害者の風俗嬢が集まる店の真実 ― 現代社会の“死んだ風俗”を坂爪真吾が語る!
――そんな労働環境にもかかわらず彼女たちはなぜ辞めないのでしょうか?
坂爪 まず取材した女性の場合、パニック障害に加え糖尿病を患っており、他の風俗店では面接すら通らない可能性が高い。また、彼女は軽度の知的障害があるように思われました。ですがサンキューならば彼女でも働いてお金を稼ぐことができるんです。
――他にも他店では不採用となるような「デブ・ブス・ババア」を集めた地雷専門店として有名なデリヘル「鶯谷デッドボール」も取材されていますね。
坂爪 取材までの経緯を話すと、デッドボールで働く女性を描いたフジテレビ制作の『刹那を生きる女たち 最後のセーフティーネット』という番組がFNSドキュメンタリー大賞を受賞し、そこからデッドボール総監督が共著者である『なぜ「地雷専門店」は成功したのか?』(東邦出版)が出版され、業界関係者から好意的に評価されていました。しかし、登場する女性を始め、デッドボールに集まってくる女性たちは、知的障害や精神障害を抱えていることは火を見るよりも明らかでした。
私は障害者の性問題に取り組んでいるNPOの代表として、そうしたデッドボールを持ち上げる風潮にまったく同調できなかったので、同書についてホワイトハンズの発行誌で極めて批判的に書評を書いたんです。そうしたところ、総監督自身から一度見に来てくださいと連絡を受けました。
――そのような批判的な立場から実際に訪れてみての感想はどうでしたか?
坂爪 雑居ビルの1室が事務所兼待機部屋になっていて、室内にいる女性は肥満体型の方が多く、年齢は30~40代中心といった感じでした。また女性には無償でヘアセットやメイクを施すヘアメイクアーティストまでいました。
そして、わかったのは実際に地雷女性を求めてくる男性客は少数派だということです。
――ということは普通のデリヘルのような気もします。
坂爪 そうなんです。「地雷専門店」というのは耳目を集めるための看板で、実際は普通の激安デリヘルなんです。いや、むしろ普通の風俗店よりも女性に稼いでもらおうと、専属のヘアメイクアーティストをつけ、獲得指名数に応じて取り分をアップしたり、女性たちのケアをするスタッフを3人雇ったりするなど工夫を凝らしています。また本番行為を求める客がいれば、すぐにスタッフが救出にむかう態勢も整えられていました。
――ここまでの話を聞くと、困難な状況にある女性たちがやむなく風俗に足を踏み入れた姿が思い浮かびます。こうした状況に対し本書ではどのように対処しようと考えられたのでしょうか?
坂爪 これまで多くの現場を描写しただけのルポがありましたが、そういったものに物足りなさを感じていました。私がいまお話したような風俗の現場や、女性たちのインタビューを通して「こんな悲惨な状況がある」と書くだけでは、読者の興味はそそるかもしれませんが解決には至りません。そこで私は、障害緒者のNPO代表という福祉の立場からこそ見える現場の問題点に対し、何かしらの解決策を提示したつもりです。
(取材=本多カツヒロ)
坂爪真吾(さかつめ・しんご)
1981年新潟市生まれ。東京大学文学部卒。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。 2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』(小学館)、『はじめての不倫学』(光文社新書)、『男子の貞操』(ちくま新書)がある。
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