生きた微生物がハードディスクの代わりになる! たった1グラムのDNAに10億テラバイトのデータ保存が可能!!
■DNAにデータを保存する画期的方法とは?
コンピュータは全てのデータを0と1の並びで処理している。DNAにデータを記録するには、この0と1の並びをATCGに置き換えればよい。例えば、『00』という並びを『A』に、『01』という並びを『C』というような規則を作り、その規則に従って0と1をATCGの配列に変換する。そして、その配列を実際に合成して作成すれば、データを保存したDNAのできあがりだ。データを読み込む際には、DNA配列を読み取り、保存の時とは逆の手順でATCGの配列を0と1に変換すればよい。
この試みはすでにいくつかの成功を収めている。ハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ氏は、2012年に100ギガバイト分の文字データをほんの1立方ミリメートルのDNAに保存した。一年後、このDNAから739キロバイト分のデータをエラーなしに再生できたという。また別のチームはMP3のデータを保存、再生することに成功している。
しかしながら、DNAをデータストレージに利用する具体的なイメージがいまいち湧かない。そこで、生物学に詳しい理学博士X氏に尋ねてみることにした。
「例えば、情報を書き込んだDNAを微生物などのゲノムに入れることが可能になれば、情報は微生物によって自動的にメンテナンスされて守られるでしょう。生物は長い進化の間に、DNAに生じたエラーを自己修復する能力を磨いてきましたから。また、その微生物を増殖させれば大容量データのコピーも容易にできると考えられます」
微生物がハードディスクドライブ代わりになりうるというのは驚きだ。また、微生物を使わなくても、水溶液や結晶の状態で保存することが考えられるという。データの詰まった結晶とは想像するだけでロマンがある。
では、近い将来、我々もUSBメモリやハードディスクドライブの代わりに、DNAストレージメモリを使うようになるのだろうか。
「問題はDNAの読み書きです。DNAを読む機器はこの数十年で小型化し、低コスト化しました。でも、DNAを読むには数時間から数日の時間がかかりますし、一回当たり数千~数万円の費用がかかります」
2000年のヒトゲノム計画では一人の人間のゲノムを読むのに一億ドルもの費用がかかったが、現在では千ドル程度にまで安くなったといわれている。しかし、記憶媒体として利用するにはこれでもまだ高すぎるだろう。またX氏によると、さらに問題なのはDNAの書き出しだという。
「DNAの人工合成についてはまだまだ研究開発の途上です。今、人工的なDNAを作るのにだいたい一塩基あたり20~100円くらいはかかります。DNAストレージの実用化には、長大なDNAの人工合成を安価かつ高速にできるようになる必要があります」
DNAの人工合成や遺伝子の設計は次の10年のホットトピックの一つともいわれ、世界中で開発競争が続いている。我々がDNAにデジタルデータを記録するようになる日も、そう遠くはないかもしれない。
(吉井いつき)
参考:「scientificamerican」「WWSS INSTITUTE」「ars technica」
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