ムンクの『叫び』最大の謎がついに解明! 専門家を120年悩ませてきた奇妙な“白いシミ”の正体と真意に驚愕
アートにあまり詳しくない人でも、ゴッホの『ひまわり』とモネの『睡蓮』、そしてムンクの『叫び』だけはお馴染みなのではないだろうか。特に『叫び』は、その一種独特な世界観から、数々のパロディの元ネタとして扱われてきたことはご存じのとおりだ。
だが、このノルウェーを代表するポスト印象派の大家、エドヴァルド・ムンクが描いた名画が、長年、とある謎に包まれていたことを知る人は少ない。その謎とは――“鳥のフン”だ。
■ムンクの『叫び』の白いシミは何?
英紙「Daily Mail」(8月31日付)によると、『叫び』に描かれている“叫んでいる人物”の右肩に不可解な白いシミが付着していることは、以前から専門家たちの間では有名な話だったそうだ。そして、戸外で絵を描くムンクの習慣に鑑みれば、おそらくこれは鳥が落としたフンだろうと考えられていたという。
実は、『叫び』は4部作だ。ムンクは1893年から1910年にかけてこれらを描いており、オレンジ色にうごめく夕空を背景にした作品が最初に描かれたものだそうで、白いシミはそれに付着している。現在、問題の『叫び』はオスロ国立美術館に所蔵されている。
この“白いシミ=鳥のフン”という考えが長年の定説となっていたわけだが、最近になってこれが大きく覆される事態となった。
「屋外に置かれた彫像やモニュメントをご覧なさい。鳥のフンが、どれほど脅威かわかるでしょう。新車だってボロボロになるくらいですから」。そう話すのは、ベルギー・アントワープ大学のヘールト・ヴァン・ダー・スニクト博士だ。彼は以前から、ムンクがせっかく描いた自分の絵を“鳥の落とし物”で台無しにするようなリスクを負うだろうかと「鳥のフン説」には懐疑的だったのだ。
■鳥のフンではなかった! 真相は?
そこで、博士は科捜研さながらの研究チームを結成し、マイクロエックス線蛍光分光分析法(マイクロXRF)で分析を行うことにした。これは、古い絵画の分析によく利用され、ルーベンスやゴッホの絵にも用いられたことがあるそうだ。
結果、サンプルから鳥のフン成分は検出されなかった。また、顔料やカルシウムも未検出となり、一部専門家から有力視されていた絵具である可能性も除外された。では、一体、シミの正体は?
なんと、ロウソクのロウであることが判明した。厳密にいえば、蜜ロウワックスというもので、新しいキャンバスを古いキャンバスの裏に貼り合わせるときに使われるそうだ。どうやら、ムンクは自分のアトリエで、ワックスを誤ってキャンバスの上にこぼしてしまったらしいというのが博士らの論証だ。
わかってしまえば、なんてことない話かもしれないが、それでも天才画家が、自身の美術史上有数の大傑作に、うっかりロウソクを垂らしてしまったというポカをやらかしていたとは、なんとも人間くさくて、巨匠ムンクにも親しみが湧いてくるではないか。
(文=佐藤Kay)
参考:「Daily Mail」、「Mirror」、ほか
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