■モデルにとって一番大切な場所で撮る
『FLESH LOVE RETURNS』は、すべてロケでの撮影だ。事前に組んだスタジオでのセッティングとは異なるぶん、別の工夫が必要になる。具体的な撮影のプロセスはどのようなものだったのだろうか?
「彼ら彼女らにとって一番大事な場所で撮ることがコンセプトなので、撮る場所は基本的にモデルさんに考えてもらうんです。初めてデートした場所を選ぶ人もいれば相手と出会った場所を選ぶ人もいる。一番長く一緒に生活していた場所を選ぶ人もいました」
強く印象に残った写真の1つに、ジャングルジムの中で抱き合ったイメージがある。鉄のポールで複数の立方体に区切られた空間の中で抱き合うカップルを普通に撮るだけでも大変そうなのに、真空の圧縮袋にパックして、モデルさんの安全確保のため、10秒という短時間で撮影しなければならない。これらのタイトな制約ゆえ、撮影の難易度はさらに高くなるように思える。一体、どのように撮影したのか?
「『(2人が)今住んでいる場所の近所で撮りたい』という要望がまずあって、撮影場所を探して周囲を歩き回っているうちに公園がいいということになったんです。撮っているうちに『ジャングルジムに入って撮ったらどうだろう?』と閃いて試してみることにしたんですね。まずは2人そのままでジャングルジムに入ってもらって位置を決め、それから圧縮袋に入ってもらって撮ったらできちゃった。撮影したのが正月で、撮っている僕の背後は団地だったから、住人がたくさん見ていたかもしれない。下手したら通報されていたかもしれませんね」