松原タニシの「事故物件住んでます日記」第1回

“誰かが死んだ部屋”に住み続ける芸人・松原タニシが体験した“なんでもなくない”日常【事故物件】

■事故物件に幽霊は出ない?

事故物件に住んできた5年間、僕は一度も幽霊を見なかった。定点カメラに変な映像が映ったり、携帯電話に謎の留守電が入ったり、エレベーターが存在しない階から降りてきたり、マンションの入口で車に轢かれたり、事故物件に住むようになってから神社仏閣に入ると突風が吹き荒れたり、なぜか携帯電話で写真を撮ろうとすると膝ばかり顔認証したりとかはあったけど、はっきりとした人型の幽霊は見た事がない。

皆さんが思っているほど、事故物件だからといって簡単に幽霊は現れないのである。

ただし、「ん?」と思う事はよくある。

例えば、「何か視線を感じる」といった人の気配。あるいは、「後ろを黒い影が横切った」といった人の気配。もしくは、「さっきまでそこに誰か居たような…」といった人の気配。

これらの人の気配は、確かに生活の中で感じたりする。「この部屋で人が死んでいる」という事実がより一層この気配に現実味を持たせる。ただ、この事実があるからこそ、自ら勝手にその「気配」を作り出している可能性は否めない。

あとはラップ音。いわゆる「家鳴り」というやつだ。

これに関しては正直、事故物件じゃなくても鳴る。普段生活を続けている中で、さりとて気にならないから気付いていないだけである。しかし、事故物件に住んでいると意識が変わる。ほんの些細な物音でも「誰か居る?」と、無意識のうちに怪奇現象の方へ意識を引っ張られてしまうのだ。一度気になってしまうともう全部怖くなる。怖いほうへ怖いほうへ繋げてしまう。普段聞こえているけど気付いていないだけの音も、意識して聞いてしまうようになるのだ。

つまりは「気の持ちよう」の部分は大きいと思う。「そうかもしれないし、違うかもしれない」の「そうかもしれない」に引っ張られると、怖い。実際、何か部屋の中に気配を感じている時に突然「パーン!」とラップ音が鳴った時があって、その時はおしっこをちびりそうになった。

でも、その怖さも、日々の生活に忙殺されると、気にならなくなる。

人間は慣れる生き物だ。一度体験した恐怖は、それを超えてこない限り「そんなもんか」と思えるようになる。人の気配やラップ音は、もしかすると「気のせい」ではない事もあるかもしれないが、大丈夫、それ以上悪さをしてこない。むしろ半年も住めば愛着さえ湧いてくるものだ。家に帰って「ただいま」と言ったら「バンバンバンバン」と4回ラップ音が鳴った時は、「ああ、おかえりって言ってくれてるんだ」と妙に嬉しくなったりしたものだ。

そして何より、僕は生きている。事故物件を転々と住み渡り、未だこうして存命中だ。究極、事故物件に住んで怪奇現象が起きたとしても、死なない。だから大丈夫。

「幽霊が怖いから事故物件は嫌だ」という人は、安心してほしい。そもそも幽霊は、そんなに出ない。し、命に別状はない

僕は職業上、事故物件に住んで幽霊を撮影しなければならない。1軒目の事故物件でオーブ(丸い発光体)が乱舞する映像を撮影するのに成功したが、それ以降は今のところバンバン撮影できているわけではない。だから幽霊にはできれば現れて欲しいのだが、なかなか思い通りにはいかないものである。

今現在日本は少子高齢化が進み、独居老人が増え続け、結果的に事故物件もたくさん余っている状態である。その全ての物件に僕が住むのは不可能だ。だから皆さんにはどんどんと事故物件に住んでほしい。借り手が見つからず困っている大家さんはたくさん居る。何より「安さ」は魅力的である。

これから、この連載では僕がこれまでに住んできた事故物件で起きたことや、住んではいないものの、これまでめぐってきた事故物件について綴ってみたいと思っている。記事を読んで、もし事故物件に住む人が増えてくれればありがたい。何がありがたいかというと、なかなか現れてくれない幽霊に、もしかしたら出会ってしまう人もいるかもしれないから。もし幽霊に出会えたなら、僕に教えて欲しい。定点カメラを持ってお宅にお邪魔させていただきたいので。


誰かが死んだ部屋に住み続ける芸人・松原タニシが体験したなんでもなくない日常【事故物件】の画像2●松原タニシ
1982年、兵庫県生まれ。松竹芸能所属のお笑い芸人。番組の企画をきっかけに、”事故物件住みます芸人”として(現在は自主的に)事故物件に滞在中。「心理的瑕疵ツアー」と銘打った怪談ライブツアーを毎年開催。CBCラジオ「北野誠のズバリ」(毎週月曜日〜金曜日13:00〜16:00)火曜日レギュラー出演、YouTubeLIVE&ニコニコ生放送「おちゅーんLIVE!」(毎週土曜日22:00〜23:00)レギュラー出演ほか、不定期にツイキャスライブ「異界に泊まろう!」にて深夜心霊スポットを探索している。

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文=松原タニシ

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