被災地は150年前にも「復興に失敗」していた! 現代アートが生んだ「新しい寺」で慰霊、鎮魂… 新世代が問いかける真の復興!

被災地は150年前にも「復興に失敗」していた! 現代アートが生んだ「新しい寺」で慰霊、鎮魂… 新世代が問いかける真の復興!の画像4鈴木履物店(路面ショーケース)SIDE COREのBIENの作品

 そして、今回の新芸術祭の大きなテーマとなっているのが、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)である。150年前、当時の明治政府は、国家公認の宗教を仏教から神道へと変えるため、仏教伝来から千年以上続いてきた神仏習合を否定して、「神仏分離令」を出した。そのことから日本全国で激しい寺院の打ち壊しが起こり、そのことが廃仏毀釈と言われる。現在の泉地区は、泉藩と呼ばれ、およそ60の寺院があったがすべてが壊され、のちに再建されたのは2つだけという。

被災地は150年前にも「復興に失敗」していた! 現代アートが生んだ「新しい寺」で慰霊、鎮魂… 新世代が問いかける真の復興!の画像5栄泉寺跡の無縁供養塔

「だから、お寺がなくなった泉の町を実際に歩いてみて欲しい」と、黒瀬は強調する。

 第一会場から第二会場に向かう途中では、巨大な無縁供養塔が強烈な印象を残す「栄泉寺跡」、墓さえも移転したために無名墓石が多数残存するだけの「荘厳寺跡」に出会う。まさにこのプロセスが「寺のない町を歩く」ことなのである。

 150年前の廃仏毀釈で寺を失い、その後も寺の復興がなされるまま、死者を弔うことができていない。泉の町で体感する廃仏毀釈からの「復興の失敗」の光景は、不毛な復興計画だけが空回りする現在の日本における「復興」とも重ねられると、黒瀬はいう。

被災地は150年前にも「復興に失敗」していた! 現代アートが生んだ「新しい寺」で慰霊、鎮魂… 新世代が問いかける真の復興!の画像6荘厳寺跡にある多数の無名暮石

「そのあとで、僕らが現代美術として、ここに作ったお寺を観てもらう。もともと日本の美術は仏教と密接で、お寺とはそのような美術品を展示するアートスペースとして機能していました。実際、第二会場の『密厳堂』はこれから本当のお寺になるんです」

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