【話題映画】「霊的ボリシェヴィキ」という言葉に隠されたオカルト的革命論とは? 月刊『ムー』創刊顧問・武田崇元インタビュー!

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――カラーテレビの普及とともに社会現象といわれる昭和オカルトの全盛期がありました。

chikyuroman.jpg復刊地球ロマン

武田「そうするとそれに便乗して76年に『オカルト時代』という雑誌が出る。さらに少し先行して『地球ロマン』という雑誌もあった。どちらも便乗のやっつけなんで売れるわけない。で、『地球ロマン』の版元だった絃映社のオーナーからオカルトをテーマにして文化的に斬新な価値あるものに出来ないかといわれて、『本邦初の異端文化総合研究誌』と銘打って全面リメイクの『復刊 地球ロマン』が隔月刊で再スタートしたんだ。編集方針は、特集ごとに抜粋も含め、生の資料を掲載する原典主義と、ラディカルな批評誌としての性格を持たせた。これはオカルトという枠を超えて、波紋を投げかけたね。当時の知的な読書人にとってオカルトは文学や趣味の世界だったんだけど、俺たちはオカルトは文学や趣味ではなく生きたムーブメント、生きた思想なんだという観点を打ち出したんだ。生の原典を突きつけ、あるいは突き抜けてイッちゃってる人に書かせながら、一方でそういうものを批評するというスタイルを取った。もちろんベタに受けとめた読者も多かっただろうけど、知的な層もターゲットにしながら、超古代史、日本ユダヤ同祖論、木村鷹太郎、熊沢天皇、カタカムナ、さらにぶっとんだ窪田志一の易断政権の物語や神代文字、ライヒのオルゴン・エネルギー、ナチのオカルト的起源などをクローズアップしていったわけ。UFOにしても宇宙友好協会(CBA)というカルト的な集団の運動史を発掘していった。これが1976年だった」


――なるほど、いまや伝説的に語られる『復刊 地球ロマン』の誕生秘話ですね。

武田「実は、その前年に武内裕の名義で大陸書房から『日本のピラミッド』を出してるんだ。1972年に大陸書房から吾郷清彦の『古事記以前の書』が出て、そんなに売れたわけじゃないけど、古代史ブームの延長線上で『上津文』や『竹内文書』や『秀真伝』が徐々に紹介されはじめていた。そういうのを手がかりに『竹内文書』を伝える磯原の天津教に行ってみたり、『竹内文書』なんかはいわゆる超古代史で天皇家が百二十代どころか、もっと昔からありまっせという話だったんだ」


――古史古伝からわかる天皇以前の神道は、右翼のなかの異端だったと言えます。

武田「俺はいまでも左翼脳だから、そういうのは受け付けない。それでも惹かれるものはあるんだよ。古史古伝で右翼的なものを切断できるんじゃはないかと考えたわけ。つまり、ウガヤフキアエズ王朝の解釈として、古代の天皇家がそれ以前にあった原住民の王朝伝承をパクッたに違いないとした。そこにうまい具合に皇国史観に汚染されてない新手の文書が浮上してきたんです。それが『カタカムナ』や『東日流外三郡誌』だった。で、そういうのを取り込みながら、超古代王朝から天皇家を切断するというスキームを作ったのが『日本のピラミッド』だった。これがそれ以降のオカルト古代史の語りの主流になっていくんだよ」


――『日本のピラミッド』もまた、武田さんのオカルト思想の根底を知るためには貴重な資料になります。

武田「振り返ると75~76年は、『三千世界一度に開く梅の花』みたいな状況だった。おりしも慶応大学の高橋巌さんが『神秘学序説』を皮切りにシュタイナーの紹介や翻訳を本格的に始めています。知的世界ではオカルティズムというのは文学趣味の話だったけど、『そうじゃない、オカルトは世界の読み方を変えるポテンシャルを持つ思想運動』ということが突きつけられてきた。ブラヴァツキーの神智学も、シュタイナーの人智学も、失われた文明や太古の神々の復権という思想が根底にある。そして、その復権によって世界を変えていこうという革命志向があったんです。そういう風にオカルトと革命がオーバーラップして、さらに金井南龍という在野の神道行者が主宰する『さすらの会』という結社の存在が自分の情報アンテナに引っかかってきた。そこでは埋没してきた神々の復権による神様革命というようなことが語られ、神社本庁に代表されるメインラインの神道に対するカウンター神道の拠点になっていた。そういうのがびんびんと響いてきたわけ。そのあたりから『霊的革命』と対に『霊的ボリシェヴィキ』という言葉も降りてきた」


――失われた神々の復権という考え方が、左翼的な革命思想と接合して、オカルト的な革命としての『霊的ボリシェヴィキ』という言葉に宿ったというわけですね。

武田「西欧のオカルティズムというのはペーガン復興なんだけれども、日本で考えたらどうなんだろうと追究していくうちに、大本教の出口王仁三郎を捉えなおすことになった。だから拙著『出口王仁三郎の霊界からの警告』の付章は『霊的革命者 出口王仁三郎』となったわけです」


――その考え方が武田さんが創刊に関わった『ムー』にも継承されていくんですね!

武田「意識的じゃないけれど、日本の超古代史、神道霊学、王仁三郎、川面凡児と、そういう記事は初期の頃はすべて俺がやっていた。超古代文明、神々の復権というのは、ムー的な世界の根幹をなすなモチーフだから。『オカルト』の元の意味は『隠されたもの』ということ。そこではまさに『隠された歴史』が語られるわけで、いまでも人気のあるテーマでしょう。実は雑誌『ムー』も最初から売れてたわけじゃなく、判型をA4からB5に変えて、巻頭の総力特集に単行本1冊分くらいの密度で情報を詰め込むようになってから売れ始めたんだ。オカルトに限らず、雑誌の特集は、ひとつのテーマを複数の人がそれぞれの切り口で書いたバラバラの記事で構成されるけど、『ムー』の売りの総力特集は一貫した物語性を持ったひとつの長い記事で構成されるようになって人気を獲得したんです。断片的なオカルト情報の寄せ集めじゃなく、物語性がないとダメ。読者が求めていたのは、世界や宇宙や歴史をめぐる壮大な物語だったわけ。そうなると超古代、秘密結社、陰謀、神々の復活、ペーガニズムというのがポイントになってくるのがわかるでしょう。古史古伝もそのままベタに紹介したんじゃ面白くもなんともない。じゃあ、物語がどう生成されるのかといえば、書き手に思想というとオーバーかもしれないけど芯がなければ、ダイナミックな物語は生まれてこない。そういう記事のポテンシャルを維持していかないとね。80年代、二匹目のどじょうを狙うように、『ムー』の競合誌がいっぱい出たけど、そういうオカルトにおける物語性の重要さがわかっていなかったから続かなかったんだと思います」


――それにしても霊的ボリシェヴィキということばの響きはなんなのでしょう。

武田「これは高橋監督との過去のトークでも言ったけど、霊的アナキズムじゃちっともインパクトなかったんだよね。左翼はあまたあるわけですが、ボリシェヴィキはほんまもんの原酒であり、口あたりよく薄められてない、まったく妥協のないガチであると、そういうイメージがあるんです」


――武田さんが運営する「八幡書店」のガチなイメージの原点もそこにあったわけですね。

武田八幡書店は神道霊学や古史古伝の原典、加工されてないほんまもん、無修正ハードコアを妥協なく追求してきたわけ。それは『復刊地球ロマン』を始めたときからあった。それに比べると、いわゆるニューエイジやスピっていうのは重なる領域もあるけれど、ちょっと志向性がちがってて、内容はぶっとんでいても、“常民”の思想なんだよな。どうしてもそこに回収されてしまう。だけど俺らが求めてきたのは “非常民” “山人”の思想なんだ。古史古伝やブレインマシンをずっとやってきたのは、そこなんだよ。常に一発ガツンとやってやろうじゃないかと」

――そういうところで繋がってるいるんですね!
(取材・文 ケロッピー前田/TOCANAスペシャル・武田崇元インタビューは次回につづく)

【映画情報】
ジャパニーズホラーの巨匠・高橋洋が仕掛ける<恐怖の革命>
霊的ボリシェヴィキ
監督:高橋洋
出演:韓英恵
2018年 / 72分
ジャパニーズ・ホラーの代表作、映画『リング』シリーズや『女優霊』など数多くのJホラー作品の脚本を担当した高橋洋監督によるかつてないコンセプトで生み出された霊的エンターテインメント。主演は、鈴木清順監督『ピストルオペラ』でのデビュー以来、異彩を放ち続ける韓英恵。さらに高橋映画の常連・長宗我部陽子、『秋の理由』の伊藤洋三郎らベテラン勢から若手まで個性派俳優陣が結集。映画で体験する心霊現象。あなたはご自宅でこの<恐怖>に耐えることができますか・・・。
公式HP:https://spiritualbolshevik.wixsite.com/bolsheviki
8/4(土) 〜 8/17(金)宇都宮ヒカリ座上映!

武田 崇元(たけだ すうげん)
1950年生まれ。灘高等学校卒業。東京大学法学部出身。伝説的オカルト誌『復刊地球ロマン』(1976~1977)の編集長として政治的ラディカリズムを触媒とする秘教的伝統の更新を企て、学研『ムー』の創刊に顧問として参画、神道霊学書籍の発掘を目的とする八幡書店を創立(1981年)、1983年には『出口仁三郎の霊界からの警告』(光文社)がベストセラーになるなど1980年代のオカルトブームに決定的な影響を与える一方で、立体録音ホロフォニクスの紹介やブレインマシンの開発など電脳シャーマニズムの旗手として当時の対抗文化全般に大きなインパクトを与えた。著書:『新約 出口王仁三郎の霊界からの警告』(学研)、『出口王仁三郎の大降臨』(光文社)、『奇跡のロックバランシング』(今日の話題社・翻訳)など。

ケロッピー前田
1965年東京生まれ、千葉大学工学部卒、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランス。世界のカウンターカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、現代アート、ハッカー、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。著書に、前田亮一『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)、『クレイジートリップ』(三才ブックス)など。昨年は、TBS人気番組『クレイジージャーニー』でノルウェーのボディサスペンション世界大会を紹介し、過去の番組で反響の大きかった“極限の光景”ベスト10にて、第一位に選ばれている。

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