失われた沖縄のイレズミ成女儀礼「ハジチ」の企画展がヤバすぎる! 生き別れた母娘、約2千人のハジチ調査&シリコンアームに忠実再現!

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ハジチのデザイン資料、鎌倉芳太郎によって描かれた沖縄・奄美の島々のハジチ(1921年頃)
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ハジチのデザイン資料

 そして、今回の展示において、最大の目玉と言えるのが、貴重な資料をもとに、ハジチを忠実に再現したシリコンアームである。

「沖縄ではハジチはおばあさんの文化になってしまっているので、もし若い女性たちがハジチをしていたらどうだろうか? どれほど魅力的だったかということを再現しようと思いました」と山本は続けた。

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シリコンアームに再現されたハジチ、同じ島出身の母と娘に施されたもの(小原一夫の調査をもとに)タトゥー制作は彫師May(Chunky maymay inks)

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 また、1930年代、当時早稲田大学生で柳田國男の指導を受け、ハジチ調査を行った小原一夫の資料から、水納島の親子のハジチが再現されていた。

 これにはすごいドラマがあって、生き別れた娘を持つ母親が、小原一夫のハジチ調査の対象となった際に、その資料から自分の娘のハジチを発見して、思わず涙を流したという。「結局、この親子は再び巡り会うことはなかったかもしれないが、今回の展示でその2人を並べてみたかった」(山本)という。

 微妙な差異がありながらも、基本となる文様は同じものが同じ位置にある。そのドラマチックなエピソードも手伝って、シリコンアームの作品のなかでも強烈な印象を与えるものとなっている。

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シリコンアームに再現されたハジチ、奄美大島 タトゥー制作は彫師May(Chunky maymay inks)
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シリコンアームに再現されたハジチ、(左から)石垣島、沖縄本土、奄美大島 タトゥー制作は彫師May(Chunky maymay inks)


 もうひとつ、小原の功績と言えるのが、ハジチの唄を譜面に起こして残したことである。1980年代の調査でも、ハジチの施術のときには、ハジチの唄を歌ったという証言が多くあるが、歌詞を覚えていてもメロディーがわからなくなっていた。今回の展示に合わせて、小原一夫の孫・森久保慶子による沖永良部の子守歌の節回しで歌われたハジチ唄の再現も試みられている。

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 それ以外にも、ハジチやタトゥーにも造詣が深く自身や妻、妻の愛人にもタトゥーを入れていた画家・藤田嗣治のポートレイト(土門拳・撮影)、画家でハジチ研究に魅せられた市川重治、会期後半には琉球風俗絵巻(複製)の展示も追加されている。

 一方、台湾原住民族のタトゥーについては、年表で沖縄との歴史的な関わりを明らかにするとともに、日本の植民地時代にイレズミを禁止されたことから、原住民族のイレズミの風習が一時期は失われたことを強調している。さらにその上で、原住民文化への復興やタトゥーブームも手伝って、台湾原住民族のタトゥーが様々な形で見直されてきていることを紹介している。

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台湾原住民のタトゥー資料

 16民族が政府により認定されている台湾原住民族のなかで、タイヤル、セデック、タロコという民族は男女ともに顔にイレズミを入れる風習があり、パイワン、ルカイという民族は、男性は身体に、女性は手にイレズミを入れる風習があったという。そのようなイレズミに代表される原住民文化は、デザインとして服飾や雑貨などにも活かされている。

「ハジチについても、現代において実際にタトゥーとして彫ることはなかなか難しいので、デザインとして継承できるのではないかと思っています」と、山本は総括する。

 ちなみに、特別企画展のオープニングに合わせ、パイワン族の彫師キュジー・パッドレスが来日、トークも行われた。

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台湾・パイワン民族の彫師キュジー・パッドレス(Cudiuy Patjidres)

 「パイワン民族には階級があるので、伝統的なイレズミを彫るためには頭目の許可が必要なんです」と語り、「太平洋諸島やフィリピンの彫師らと情報交換して、手彫りの技法を学びました」と自作の道具を披露してくれた。

 展示会場でのトークのあとには、別会場でキュジーを囲んでのイレズミ交流会が行われた。そこでは、実際にハジチを施している若い女性にも出会うことができた。

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イレズミ文化交流会で出会ったハジチした女性

 ハジチを巡る新しい時代の到来、今回のハジチ展は確実にそのきっかけとなり得るものである。今後の巡回展にも期待したい。


■開催概要
展覧会名: 特別企画展 沖縄のハジチ、台湾原住民族のタトゥー「歴史と今」
会期:2019年10月5日(土)~2019年11月 4日(月)
9:00~18:00(金・土は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで
毎週月曜日休館
会場:沖縄県立博物館・美術館
特別展示室2
沖縄県那覇市おもろまち3丁目1番1号
https://okimu.jp/exhibition/1567577451/
観覧料:入場無料
主催:株式会社Nansei
共催:山本芳美(都留文科大学教授)、NPO法人沖縄東アジア研究センター
協賛:台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
後援:沖縄県立博物館・美術館

■縄文タトゥー復興プロジェクト 展覧会

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大島托 × ケロッピー前田「縄文族 JOMON TRIBE 2」
2019年11月15日 – 12月1日 @阿佐ヶ谷 TAV GALLERY
https://tavgallery.com

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文=ケロッピー前田

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