安倍晋三よ、この映画を観よ、そして恥じよ! 学生たちの“胸アツ”すぎる政治討論会を映画化『三島由紀夫vs東大全共闘』監督インタビュー

 豊島圭介監督による映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』が3月20日から公開される。TBSに保管されていた伝説の討論会の映像に、当事者たちのインタビューを絡ませて映画は作られている。公開に先立って、豊島圭介監督から話を聞いた。

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©2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会(ポスター)と、左は豊島圭介監督

 学生たちの熱き討論が繰り広げられる中、東大全共闘側で討論のキイパーソンとなっているのが、芥正彦。三島に対して「おそらく自動律に苦しみ抜かれて自衛隊の中で遊んだり、『楯の会』という裏国家を作ったりするみたいなこと、これは全部ゲームになってしまう」と挑発とも取れる発言をした。三島は「私がゲームならあなた方はゲームじゃないのか。それであの解放区というのはゲームじゃないのかい」と言い、芥は「遊戯です」と答え、そこから時間と空間の話になっていくという、アクロバティックな言葉のやり取りが展開される。

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©2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会 中央が芥正彦

豊島監督「自分の長女である赤ちゃんを、芥さんは肩に乗せて壇上に現れるわけですけど、そこからして芝居がかってるわけです。討論会で司会を務めていた、元東大全共闘の木村修さんにインタビューした時に、裏話を語ってくれました。そしたら、三島と1対1で立ち向かうのはとても自信がないから、芥くんに来てもらおうということになったと。そして、芥さんを含めたメンバーで、こんな討論にしよう、シュールリアリズムを持ち出そうとか、けっこう綿密な打ち合わせ、準備をして、当日を迎えたって言うんですね。だから劇的な空間を作ろうって意識は凄く強かったわけですよ。芥さんがいなかったら、ここまでおもしろい討論にはなってなかったでしょう。挑発してみたり、三島さんが一所懸命喋っている横で両手を挙げて伸びをしてみたり、見ててイライラするんですけどね」(豊島圭介監督、以下同)

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 インタビューは当時の東大全共闘の3人、楯の会の3人、瀬戸内寂聴や平野啓一郎ら作家、内田樹ら研究者、現場にいた取材者など13人に及んでいるが、芥のインタビューのみ暗い照明で撮られていて、演劇的な映像になっている。

豊島監督「インタビューはドラマチックにしないようにしようと、ほとんど昼間の会議室とかで撮ったんです。平野啓一郎さんだけ、窓がない部屋だったんで、ちょっと夜っぽくなりました。

 芥さんには最初、900番教室に来てください、そこでインタビューしましょうって言ったんです。

 そしたら、『そんなロマンチックな企てには乗れない、うちに来い』って言われて、四谷のマンションに行きました。そこで前衛演劇の稽古をしたりしているらしいんですけど、当時の闘争で引っぺがして投石に使われてたような敷石が床になってるんです。

 『夜型だから夕方からインタビューを始めて欲しい』って言われて、日が暮れてるんで夜用の照明を焚くしかなかった。何十年も使っている椅子に座って、彼は語るわけです。しかも、インタビューは普通、1時間半から2時間くらいなんだけど、芥さんは4時間かかったんですよ。話が果てしなく広がっていくんです。他の人がインタビューを終えるくらいの時間になっても、2枚用意した質問表の1枚目の3問目までしか終わってませんでしたから。

 その間に、芥さんがヌーッと寄って来て、『文化的天皇ってなんだい』って詰め寄られて、怖いー、恐ろしいーって思うんだけど、俺、撮れてる、撮れてる、このカット絶対使えるなって、震えながら思いましたよ。

 インタビューの終わりの頃に、芥さんをちょっと怒らせようと思って、“全共闘の敗北と言われてますけど”って質問表にはない問いをしたら、芥さんならではのとてもユニークな答えが返ってきた。その論理と言葉の選択は人生で初めて聞きましたから。この瞬間も、撮れた! と思いましたね。

 最初は、芥さんを特別視するのはやめよう、彼だけが全共闘じゃないからなんて言ってたんですけど、引き寄せられたというか、やられたというか……結果的にはそうならざるを得ないインタビューが撮れてしまったんです。芥さんは試写会に観に来てくれて、僕の顔を見たら、ボーンって僕の胸を叩いて、『こいつが俺を虐めた人だ』って笑って言ったんです。芥さんにとっても4時間は辛かったんだなっていうことが、その時に分かったんです」

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