■性愛の「わからなさ」に惹かれて
ーーここで少し、ご自身のことについて教えてください。処女写真集の『PINKY & KILLER』(自主制作版、絶版)以降、一貫して男女の性愛をテーマにしてきましたね。なぜですか?
ハル:男女の性愛は自分のなかでは特別なものなんです。小学5年生の頃に釣りに行った河原のコンクリートにスプレーで落書きされた「SEX」の三文字を初めて見て、「えすいーえっくすって何だ?」って気になったことがあって、学校で習うような誰しもが知っていることではなく、謎が多かったんですよ。怖いもの見たさというか、頭から離れられなくなった。
僕の実家は埼玉なんですけど、誰もいないような道路沿いにあるビニ本の自販機とか、ひっそりと隠してあるわけじゃないですか。隠してあると余計見たくなりますよね。それで余計に興味を持ったというのが根底にありますよね。ラブホテルとかも中の様子はわからないし、入り口にぴらぴらした妖しい色のカーテンが降りていたり、わざと隠しているような感じが子供心に刺激されたんですね。
家から自転車で30分くらいの所にラブホテルの廃墟があって、そこにもやっぱり落書きがあった。その後に学校の性教育とかで学んで行くんですけれど、男と女がセックスすることを知ったことによって、謎が解けた反面、まだ自分が体験してないから、それはそれで興味が湧いたんですよね。そういう子供の頃の体験が根底にあると思います。
あと、戦争とか経済とか、世の中の全ての物事の根底には愛とその逆の憎しみがある。それで物事が動いているんだっていうように思っているんです。
ーーそれは小学生の頃に気づいたんですか?
ハル:『Couple Jam』を撮り始めた頃です。写真で愛を扱うことはあらゆるものの中で最も壮大なもので、これは続けていくに値すると思いました。『PINKY & KILLER』を撮っていた頃はまだそこまで考えが至らず、子供の頃の延長でしたけれど。
ーー初期の作品ではアンダーグラウンドな要素も取り込んでいますね。
ハル:男女の性愛もそうですが、タトゥーとかピアッシングのようなサブカルチャー的なものって、自分で切り込んで行かないと見られないじゃないですか。隠されているぶん余計に興味を持っていたっていうのもあります。
ーーそういう隠された世界を知りたいと思った?
ハル:「知りたい」というより「見たい」ですよね。TOCANA的に言えば、UFOとか宇宙人を探究するようなものですよ。親とかにも聞けないし、教えてもくれない。子供の頃からずっと謎だったセックスの意味とかを学校で知って、そのこと自体の知識への興味は無くなっていくんだけれど、自分もするようになって具体的な行為への興味は続いていく。その後、ちょっと外れるんですけれど。
ーー「外れる」とは?
ハル:ちょうど写真を覚えたての頃にバックパッカーをやっていて、街の風景とかを撮っていた時期があるんです。そこからアンダーグランドの世界に戻っていったんですね。旅先の景色を見るのが大好きだったんだけれど、旅行中に出会った鳥葬の現場とかに面白みを感じていて。やっぱり、「見ちゃだめ」って言われるようなものは余計に見たくなってしまう。