■被写体をパックする理由
ーーデビュー作である『PINKY & KILLER』から『Washing Machine』まで、ハルさんの作品に通底していることは、つねに被写体を何かにはめている。パックしているということです。どうしてそこに執着してきたんですか?
ハル:はめていると言うよりも凝縮させているんですよ。パックすることはそのための手段で、一番大事なのは凝縮させることなんです。これは自分の性癖のようなものなのかもしれない。凝縮して作った写真は情報量も凝縮されているし、絵としての強度が増すって信じている部分があります。そうすることで作品の重みのようなものが増すんじゃないかって。
ーーハルさんが写真に詰め込む情報には、そのモデルの生活や人生、生きてきた歴史の匂いみたいなものが濃厚に漂っていますね。
ハル:自分のホームページのプロフィール部分に「僕は新しい形のポートレートを撮る写真家だ」っていうことを載せているんですけれど、「ポートレートって何?」って考えた時に、僕が思い描くのは、顔かたちだけじゃなくて、その1枚の写真からその人のバックグランドとか内面についての情報が垣間見えるものなんです。表情とか仕草からその人の内面が滲み出ている、みたいなふわっとしたことではなく、もっとクリアな情報を詰め込んだっていうことですよね。半ば強引に。
ーー写っているモノにその人の背景などを語らせると。
ハル:そうですね。化学調味料を使った料理のように、はっきりとクリアーに、毒々しく顕したい。
ーーさきほど「性癖かもしれない」と言っていましたが、それを意識することはありますか?
ハル:ありますよ。たとえば女性と抱き合っている時には1つになってしまいたいって思うし、このまま入って行くこともできるのかなって思うこともある。それと、自分で見ていて面白いと思うものって凝縮されている場合が多いんですよ。たとえば、高解像度の巨大な空撮写真とか。ずっと見ていられます。
ーー写真を捉える際も、ぼんやりとではなく、写されたモノの情報を中心に捉えているのかもしれないですね。