【展示中】カップルを真空パックし、建物もバキュームした写真家フォトグラファー・ハルの新作がヤバい! 「ドラム式洗濯機」に人間を凝縮させて“洗浄”!

■不変と普遍、そして再生

ーー洗濯機をモチーフに撮影を進めてきたなかで気づいたことはありますか?

ハル:洗濯機って汚れた衣服を入れて洗浄する。そこからまた日常の生活に戻っていく。再生するんですよね。そういう意識はあります。使用済みのものが入って、また新しいものになって出ていくみたいな。

ーー『Flesh Love』とか『雜乱』って、ある意味、カップルの記念のポートレートみたいなものだと思うんですよ。実際に、2人が一緒になった記念に、ハルさんに撮影を頼むカップルもいましたよね。同じような見方をすれば、『Washing Machine』の場合は、挫折とか不遇を囲っているような人、人生の転機を迎えている人が撮影されて作品になることで、前の人生をリセットし、新しい人生に向かっていくというような機能もありうるのかもしれません。


ハル
:考えてはいなかったけれど、そういう切り口でも1つのシリーズになるかもしれませんね。いろんな場所からやってきたさまざまな立場にいる人が洗濯機に入って、洗われて、新しい自分となって社会に出ていく、ある種の再生装置。

ーー『雜乱』を発表した時、たしか、身近なものといっしょにカップルをパックした様子を「ブラックホール」になぞらえていましたよね。『Washing Machine』でも洗濯機のことを小宇宙にたとえています。ハルさんは宇宙のように永遠で不変的かつ普遍性のあるものに惹かれているのかもと思いました。たとえば、これまでテーマにしてきた男女の性愛って人類が続いていくために必要で、人間がこの世に生きている限り、時代も場所も関係なしに変わらないことですよね。『Washing Machine』に見られる「再生」ということも、生きていれば誰もが経験することです。

ハル:僕は宇宙にものすごく惹かれているんですけれど、そこにはやはり永遠があるんです。いま見ている星のなかには、数億光年をかけて地球に光が届いているものもあるわけで。

 カップルをパックして撮影する時は、その一瞬しかない2人の状態を永遠に残すためにシャッターを切っているんですよ。かたや、洗濯機という装置を使ってその人の人生をリサイクル、再生するっていうことも、永遠に続く輪廻のようなイメージではありますね。その点が『Washing Machine』と過去に発表した作品との共通点かもしれません。

 いま「コロナ以前」と「コロナ以降」とういう表現で時代を括って分ける発言がニュースとかで出てきますよね。ウィルスが付着しているかもしれない汚れ物を洗浄してまた生活のなかに戻っていく。これって人生そのものを表しているよにも思うんですよ。洗濯機はコロナが終わった後の世界を人間が生きていくこと顕すシンボルともいえるんじゃないかって思います。

■作家インフォ

フォトグラファー・ハル

東京で生まれ、大学でメカを学ぶ。2004年よりカップルを撮り始める。 2014年、Breda Photo(オランダ) 特別招待作家。

<写真集>
2016年 Flesh Love Returns(冬青社)
2015年 43(Zine 私家版)
2014年 雜乱(冬青社)
2011年 Flesh Love(冬青社)
2009年 Couple Jam(冬青社)
2007年 Pinky & Killer DX(冬青社)
2004年 Pinky & Killer(私家版)

<個展>
2020年 Flesh Love All(ギャラリー冬青, 東京)
2020年 TIIDA(ギャラリー冬青, 東京)
2019年 YOKO(ギャラリー冬青, 東京)
2018年 Flesh Love All(Studio Bizio, エディンバラ, UK)
2018年 Flesh Love All(東門美術館, 台南, 台湾)
2018年 Flesh Love All(1839Contemporary Gallery, 台北, 台湾)
2017年 Flesh Love Returns(PLACE M, 東京)
2017年 HALO(ギャラリー冬青, 東京)
2015年 PHOTOGRAPHER HAL(Ibasho Gallery, アントワープ,ベルギー)
2015年 渋谷の卵(渋谷区役所跡地, 東京)
2015年 ?(ギャラリー冬青, 東京)
2014年 雜乱(銀座ニコンサロン, 東京)
2013年 Flesh Love(1839Contemporary Gallery, 台北, 台湾)
2012年 Flesh Love(Blue Sky Gallery, Portland, USA)
2012年 Flesh Love(TANTO TEMPO, 神戸)
2011年 Flesh Love(新宿ニコンサロン, 東京)
2009年 Couple Jam(ギャラリー冬青, 東京)
1999年 ナツヤスミ(新宿ニコンサロン, 東京)

<グループ展>
2019年 LOST IN JAPAN(Galerie Monika Wertheimer, バーゼル, スイス)
2019年 Japan Naakt(Sieboldhuis, オランダ)
2018年 The Curious Obsession(See+,北京,中国)
2014年 イメージメーカー展(21_21 Design Sight, 東京)
2014年 Special Exhibition in Breda Photo(ブレダ,オランダ)
2014年 JAPON(Abbaye St Andre Centre d’ art Contemporain,フランス)
2013年 Transformer. The Body Remixed(Galerie SAW Gallery, カナダ)
2012年 Love Love Show(鞆の津美術館, 福山)
2012年 New Directions-Crossing Territories(Wall Space Gallery, USA)
2012年 I AM HEATH CLIFF(Daine Singer,メルボルン,オーストラリア)
2012年 Snap! Orlando(USA)

<受賞>
2020年 Photo lucida(USA)Top50 photographer選出
2015年 カンヌライオンズ(フランス)銀賞
2015年 London International Creative Competition(UK)ファイナリスト
2015年 D&AD(UK) Wood Pencil(3位)
2015年 Spikes Asia(シンガポール) 銀賞
2014年 Prix de la Photography(フランス)3rd Plize
2012年 サンケイ広告大賞最優秀賞受賞
2012年 Prix de la Photography(フランス)2nd Plize
2011年 Art of Photography(USA)1st Place
2011年 Review Santa Fe 100 Photographer’s Listing(USA)選出
2009年 講談社広告賞受賞
1999年 ニコンサロン JUNA21 選出

<コレクション>
2011年 ピゴッツィ財団コレクション Flesh Love
2009年 ピゴッツィ財団コレクション Couple Jam

<アートフェア>
2019年 MIA FAIR MIRANO(ミラノ,イタリア)
2018年 HAUTE PHOTOGRAPHIE STOCKHOLM(ストックホルム,スウェ ーデン)
2016年 PHOTO LONDON(UK)
2015年 UNSEEN(アムステルダム,オランダ)
2011年 アートフェア東京(日本)
2011年 Paris Photo(パリ,フランス)

URL:https://photographerhal.com/

■写真展インフォ

フォトグラファー・ハル写真展『Washing Machine』

会期:2021年5月7日~5月28日
開場時間:11:00~19:00 定休日:日曜日、月曜日、祝日
会場:ギャラリー冬青
住所:東京都中野区中央5-18-20
TEL:03-3380-7123
URL:http://www.tosei-sha.jp/

文=渡邊浩行

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