密!密!! 密!!! 混沌と猥雑の圧倒的エネルギー! 人間が発する強烈な光と汗、命のスパーク…“男の裸祭り”の神髄を捉えた写真家・甲斐啓二郎インタビュー

綺羅の晴れ着 Clothed in Sunny Finery/甲斐啓二郎


■レンズの先にある「人間とは何か?」という問い

ーーパンデミック以降、祭りのようなイベントは自粛になっているケースが多いと思うのですが、その間は何をしていたんですか?

甲斐:中止になった祭りもあるけれど、大半は規模を縮小して神事だけを執り行うような形で細々と続いているので、とりあえず現場には行っています。でも、やっぱり撮れない。ムービーは撮っていて、この写真展でも流しているんだけど、写真は撮れないですね。

ーー今後はどのような展開を考えていますか?

甲斐:これまでの形で続けて行けるのか、正直、迷っています。コロナ禍がいつまで続くかはわからない。来年も厳しいかもしれないけれど、いつか撮れるようになることを願いつつ。もちろん、やりたい気持ちはありますよ。まだまだ撮り足りない。

ーー最後に、甲斐さんは写真を通して何を見たいんでしょう?

甲斐:なんだろう? 人間のアミニズム的な部分ってもともと身についているというか、DNAにビルトインしているような気がするんです。虫を殺しちゃいけないとかそういう道徳、倫理観は成長にともなって身に付くものなのかもしれないけれど、岩とか木を見ていると落ち着くとか、そこに神々しさを感じるようなことって誰しもあると思うんです。そういう部分を撮りたいというか、つまりは「人間とは何なのか?」っていうことですよね。たとえば「なぜ生きているのか?」とか。

 仏教で言えば「生きることは苦でしかない」ってことなんだけれど、でも、僕が撮っているような祭りって、苦しいことをわざわざやったりして、少しでも未来をよくしようという人間の営みじゃないですか。上手い事は言えないけれど、やっぱり「人間とは何か?」ですよね。

ーー祭りってハレとケのハレですよね。写真で言うと光と影になるのかもしれませんが、もし生きることがハレだけだったなら、写真の中で祭りに没入している人たちが放つあの輝き、多幸感は生じないですよね。甲斐さんはその一時のハレに人間が発する強烈な光、命のスパークのようなものを撮りに行っているのかもしれないと思いました。

甲斐:僕が撮っている祭りは参加者同士の戦いで、見方によってはただ困難しかないわけです。でも、困難があるからこそ幸福がある。その逆に、幸福から生じる困難はないですよね。それが人間の不思議さだって思います。

■プロフィール

甲斐啓二郎(かい・けいじろう)
1974年福岡県生まれ。2002年東京綜合写真専門学校を卒業。現在、同校非常勤講師。スポーツという近代的概念が生まれる以前の世界各地で伝統的に行われている格闘的な祭事を、その只中に身を投じながら撮影し、人間の「生」についての本質的な問いに対して写真で肉薄する作品を発表している。2016年Daegu Photo Biennale(韓国)、2018年Taipei Photo(台湾)、2019年Noorderlicht International Photography Festival(オランダ)などのグループ展に参加。個展多数。写真集に『Shrove Tuesday』(TOTEM POLE PHOTO GALLERY、2013年)、『手負いの熊』(TOTEM POLE PHOTO GALLERY、2016年)がある。最新写真集『骨の髄』(新宿書房)を2020年3月に刊行。2016年、写真展「手負いの熊」「骨の髄」で第28回写真の会賞を受賞。2020年に写真集『骨の髄』にて、第20回さがみはら写真賞を受賞。2021年、同写真展にて第45回伊奈信男賞を受賞。
URL:https://www.keijirokai.com/

■写真展インフォ
甲斐啓二郎写真展「綺羅の晴れ着  Clothed in Sunny Finery」(東京都)
期間:2021年6月19日~7月11日
時間:12:00~19:30(火曜日~土曜日) 12:00~17:00(日曜日)
定休日:月曜日 入場無料
場所:kanzan gallery
住所:東京都千代田区東神田1-3-4  KTビル2F
協力:株式会社コウコーAD、菊田樹子
URL:http://www.kanzan-g.jp/

ギャラリートーク「見えないモノと写真」
日時:2021年7月10日 17:30~
出演:谷口昌良(空蓮房房主・住職・写真家)/  甲斐啓二郎(写真家)
定員:15名(要予約)
URL:http://www.kanzan-g.jp/

甲斐啓二郎写真展「綺羅の晴れ着  Clothed in Sunny Finery」(三重県)
期間:2021年7月17日~7月25日
時間:13:00~18:00
定休日:会期中無休 入場無料
場所:gallery0369
住所:三重県津市美里町三郷369(古民家Hibicore内)
URL:https://gallery0369.jp/

ギャラリートーク
日時:2021年7月24日(土) 11:00~12:00
場所:gallery0369
出演:甲斐啓二郎(写真家)
定員:10名(要予約)
URL:https://gallery0369.jp/

甲斐啓二郎写真展「手負いの熊」
時期・期間:2021年秋(後日HPにて告知)
時間:7:00~20:00
定休日:水曜日
場所:栞日
住所:長野県松本市深志3-7-8
URL:https://sioribi.jp/

甲斐啓二郎写真展
期間:2021年11月30日~2022年1月30日
時間:9:00~17:00(16:30に受付終了)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日、年末年始は連続営業)
入場料:大人300円 小中学生150円(20名様以上団体2割引)
場所:おぼろ月夜の館 斑山文庫
住所:長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9549-6
URL:https://www.dia.janis.or.jp/~hanzan/index.html

■写真集インフォ

甲斐啓二郎写真集『骨の髄 Down to the Bone』
サイズ:257mm × 250mm 132ページ
発行元:新宿書房
価格:5,830円(税込)
https://www.keijirokai.com/shopより購入可能

 

 

 


甲斐啓二郎写真集『手負いの熊 Wounded Bears』
サイズ:257mm × 300mm 28ページ
発行元:TOTEM POLE PHOTO GALLERY
価格1,980円(税込)
https://www.keijirokai.com/shopより購入可能。

 

 

文=渡邊浩行

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