エルサルバドルに出現した「ビットコインシティ」の最悪の未来と根本的な欠陥とは?
今年11月、エルサルバドルのブケレ大統領が、フォンセカ湾沿いの火山の近くにビットコインシティを建設すると発表した。
このビットコインシティはコインのような円形の人工都市で、空港、鉄道、商業施設や高級住宅を備えた本格的な大都市になる。火山に建設される地熱発電所でエネルギーをまかない、消費税率はゼロ。都市の内部での経済活動はすべてビットコインで行われ、世界中の投資家から投資を募ることで都市建設を進める。
世界唯一のアイデアではあるが、経済モデル的にはビットコインシティはドバイ、シンガポール、マカオに近い構想だ。都市全体レベルを魅力的な投資案件に作りこみ、そこに投資を呼び込み繁栄することでさらに世界中から巨額の投資が集まる。
エルサルバドルは今年9月、世界で最初にビットコインを法定通貨にした国でもある。ビットコインシティ構想の責任者はビットコインの価値はこれから5年以内に1ビットコインが100万ドル、つまり現在の20倍に到達すると考えている。
ビットコインシティ建設のためにエルサルバドル政府が発行する10億ドルのビットコイン債はその半分をビットコインを購入して担保とするが、今のペースでビットコイン価格が上がれば、いまから倍になった瞬間にビットコイン債は担保だけで元本を賄うことができるようになる。金は無限に生まれるわけだ。
ヨーロッパの西に建設される円形の人工都市といえばアトランティスを彷彿させる。ビットコインシティはアトランティスをしのぐ経済発展を遂げ、5年後には世界のセレブしか住むことができない世界最高級の人工都市に発展するかもしれない。
そう考えると一般人はビットコインシティにいち早く移住したほうがいいかもしれない。都市建設に人手が必要になるから仕事はいくらでもある。給料はビットコインで支払われ、それがみるみるうちに20倍の価値に膨れ上がるから使っても使っても減ることはない。
しかしこのビットコインシティ構想、根本的なところで戦略的欠陥があると経済学者は指摘する。
「5年以内に20倍に通貨価値があがると信じるひとびとが集まるビットコインシティではかならず経済活動が停滞する」
というのだ。
それはこういうことだ。もしあなたがビットコインシティ建設の仕事にかかわって年収1ビットコイン(ワオ!600万円だ!)を手に入れるとする。しかもそれが5年後には20倍の1億2000万円になるとあなたが考えているとする。手持ちの財産の価値がどんどん上がっていくから将来の心配はない。あなたはそう考えるかもしれない。
それで最初のうちは建設現場に行くのにタクシーに乗ったり、仕事帰りには仲間とどんじゃかやって楽しく毎日を過ごしたとする。するとあなたは気づくだろう。手元には0.1ビットコインしか残っていない。そうビットコインシティでの支払いはすべてビットコインなのだ。
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2024.10.02 20:00心霊エルサルバドルに出現した「ビットコインシティ」の最悪の未来と根本的な欠陥とは?のページです。ビットコイン、エルサルバドル、ビットコインシティなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで