米空軍トップが不問にした「チャイルズ&ウィテッドUFO遭遇事件」とは? “地球外”を示唆するレポートも存在

 米アラバマ州上空を飛行中の旅客機のパイロット2人が肉眼ではっきりと目撃した大型のUFO(※)の正体とは――。なぜ当局は目撃報告を不問にしたのか。

(※) UFO(Unidentified Flying Object:未確認飛行物体)は、説明のつかない航空現象をすべて含むが、現在は「宇宙人の乗り物」という意味で用いられることが多い。そのため、現在アメリカ軍では「宇宙人の乗り物」という意味合いが強くなったUFOに替えて、説明のつかない航空現象に対し、「UAP(Unidentified Aerial Phenomena:未確認航空現象)」という呼称を採用している。最初のUFO目撃談とされる1947年の「ケネス・アーノルド事件」で、実業家のケネス・アーノルドが目撃した飛行物体について「水の上を滑る円盤のように」動いていたと描写したことから、宇宙人の乗り物を「空飛ぶ円盤(flying saucer)」と言うこともある。

旅客機のパイロット2人が光り輝く大型のUFOを目撃

“史上最大のUFO事件”である「ロズウェル事件」が起こった1947年は、近代UFO史にとってマイルストーンとなる重要な年だが、その翌年もまたアメリカの空では不穏な事件が続いていた。

 1948年には重要な3つのUFO事件が起こっている。1月には戦闘機がUFOに撃墜された疑惑のある「マンテル大尉事件」が起こり、10月には戦闘機とUFOがドッグファイトを繰り広げた「ゴーマン少尉UFO空中戦」が起こった。

 そして7月には旅客機のパイロット2人が光り輝く大型のUFOを目撃した「チャイルズ&ウィテッドUFO遭遇事件」が起こっている。

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画像は「Pixabay」より

 1948年7月24日午前2時45分、米アラバマ州南西部の高度1500メートルの空を飛行していたイースタン航空のダグラスDC-3のパイロット、クラレンス・チャイルズ氏とジョン・ウィテッド氏と乗客は窓の外の光景に驚かされた。「光る物体」が旅客機のそばを通り過ぎていったのだ。

 2人のパイロットは事件の約1週間後に公式に目撃談を話している。

「(機体に)翼が存在しないことは明らかでした。それはジェット機またはその他のタイプの動力によって駆動され、後方へ15メートルほどバックファイヤーを放っていました。上甲板と下甲板を示す2列の窓があり、そしてこれらの窓の中からは非常に明るい光が輝いていました。機体の下には青い光の輝きがありました」(チャイルズ氏)

 チャイルズ氏は、UFOが雲海に分け入って視界から消えるまで約10秒間ほど目撃していたと話している。

「物体は葉巻型で、長さは約30メートルありました。胴体はB-29(爆撃機)のそれの3倍ほどあるように見えました。上段と下段の2列の窓がありました。窓はとても大きく、正方形に見えました。それらはある種の燃焼によって引き起こされたと思われる光で白くなっていました……。私たちが今見たものをチャイルズ氏に尋ねたところ、彼は知らないと言いました」(ウィテッド氏)

 深夜の出来事であったため、20名の乗客のほとんどは就寝中であったが、起きていた乗客の1人は「異常に明るい物体が窓を通り過ぎた」と話し、パイロットたちの話を裏付けた。

 両方のパイロットはまた、目撃したUFOの機体の図面を作成し、新聞やラジオのインタビューで詳細を提供した。ジョージア州アトランタの地元紙「The Atlanta Constitution」は7月25日の記事「アトランタのパイロットが翼のない空のモンスターを報告」と題する記事を報じた。記事の中でチャイルズ氏はUFOが自分たちに向かって来ているように見えたので、不快な接近遭遇のように見えたと説明した。

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「History.com」の記事より

「私たちは左に曲がり、それは左に曲がり、右に約200メートル、上に約200メートル上空を通過しました。その後、(UFOの)パイロットが私たちを見て逃げようとしたかのように、機体は後方から猛烈な炎を放って雲の中に飛び込みました」(チャイルズ氏)

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「History.com」の記事より

空軍トップにより事件は“お蔵入り”に

 実はチャイルズ氏もウィテッド氏も第二次世界大戦中は空軍将校を務めたパイロットであり、証言者の乗客も退役軍人であったこともあり、当局はこの事件を当初は重く受け止めていたという。

 米空軍内の「Air Technical Intelligence Center(航空技術情報センター)」はこの事件の極秘レポートを作成し、米空軍で最初にUFO調査の責任者となったエドワード・ルッペルト氏はこのレポートを見たと証言している。レポートには「UFO」の文字が記されていて、このUFOが地球外由来のものである可能性を示唆した内容であったという。

 ルッペルト氏によればこのレポートは空軍トップのホイト・ヴァンデンバーグ参謀総長の目にも触れたが、参謀総長の納得は得られず、数カ月後に機密解除された挙句に破棄されたということだ。ヴァンデンバーグ参謀総長は目下の課題である“冷戦”以外のことにリソースを割くのを嫌ったようであるという。

 最終的に空軍はこの事件は自然現象の火の玉や、燃えながら落下する隕石の類の誤認であると結論づけた。

 こうした経緯もありじゅうぶんな調査が行われてこなかった「チャイルズ&ウィテッドUFO遭遇事件」は今も依然として最も論争の的となっているUFO事件の1つである。

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画像は「Pixabay」より

 アリゾナ大学の物理学者でUFO研究家であるジェームズ・E・マクドナルド博士は、事件から約20年後の1968年に2人のパイロットをインタビューし、彼らは自分たちが見たのはやはりある種の航空機であると信じ続けていたことを報告している。

 そのインタビューでウィテッド氏は当時の証言ではUFOは雲の中に消えて見えなくなったと話したが、実はUFOは目の前で瞬時に消えたのだという新たな証言を行ったのだった。

 冷戦時代の初期に起きたこのUFO目撃事件に75年の歳月を経て新たな動きが見られることがあるのか、今後も関連する情報をチェックしていきたい。

参考:「History.com」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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