幻の惑星“ヴァルカン”はなぜ消えたのか?消えた星と未だ見ぬ第9惑星

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イメージ画像 Created with DALL·E

 宇宙には、いまだ解明されていない謎が数多く存在する。そして今、太陽系の果てに存在するとされる仮説上の「第9惑星」の探索が、かつての19世紀に起きた天文学史上のミステリーと重なり合っている。それが、幻の惑星ヴァルカンの物語だ。

第9惑星の探索

 第9惑星の存在が示唆されたのは、冥王星のさらに外側を公転する「カイパーベルト天体」の異常な動きがきっかけだった。これらの天体は、まるで見えない重力によって影響を受けているかのように特定の方向へと集まる傾向があった。この現象を説明するために、科学者たちは太陽系外縁に巨大な惑星が潜んでいる可能性を考え始めたのだ。

 計算によると、第9惑星は地球の数倍の質量を持ち、太陽から遥か遠くを回っているとされる。しかし、これまでに強力な望遠鏡を用いても直接その姿を捉えることはできていない。それでも、計算上の予測が的中した過去の事例があることから、科学者たちはその存在を確信している。

 この謎の惑星の探索には、現代の最先端技術が駆使されているが、このような見えない惑星の存在を仮定し、それを探し求めた例は過去にもあった。それが「ヴァルカン」の発見と消滅の物語である。

幻の惑星ヴァルカンの謎

 ヴァルカンは、望遠鏡を使った観測ではなく、数学的な計算から導き出された存在だった。ニュートン力学は惑星の運動を精密に説明する理論だったが、水星の軌道にはわずかな異常があった。その軌道がわずかにずれる現象は、既知の惑星の引力だけでは説明がつかなかったのだ。

 そこで19世紀の天文学者ユルバン・ルヴェリエは、「水星よりも内側に未知の惑星があるのではないか」と仮説を立てた。この未知の惑星が水星に重力の影響を与えていると考え、彼はこの天体を「ヴァルカン」と名付けた。

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ユルバン・ルヴェリエ 画像は「Wikipedia」より

天文学界を熱狂させた探索

 ルヴェリエの計算に基づき、多くの天文学者がヴァルカンの存在を証明しようと試みた。太陽に近すぎるため通常の観測では確認が難しかったが、日食時に太陽の光が遮られるときが観測のチャンスとされた。1859年、フランスの天文学者が「黒い影のような天体」を見たと報告し、一気にヴァルカンの存在説は広まった。

 しかし、その後の観測では決定的な証拠が得られなかった。報告される目撃情報は不確かで、観測のたびに位置や軌道が一致しなかった。やがてヴァルカンの存在に疑問が持たれ始め、多くの科学者が懐疑的になっていった。

幻の惑星はなぜ消えたのか?

 ヴァルカンの正体が明らかになったのは、20世紀に入りアルベルト・アインシュタインが「一般相対性理論」を発表したときだった。彼の理論によれば、重力は単なる力ではなく、時空の歪みそのものである。この理論を用いると、水星の軌道のずれは、太陽の強い重力が時空を歪めることによって生じるものだと完璧に説明できた。

 つまり、ヴァルカンは実在しなかった。惑星の存在を仮定しなくても、水星の動きは一般相対性理論によって説明できるようになったのだ。こうして、ヴァルカンは天文学史から静かに姿を消すこととなった。

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Image by mike lacoste from Pixabay

第9惑星の探索は新たな宇宙の扉を開くか?

 ヴァルカンの物語は、「科学とは仮説と検証の繰り返しである」という事実を示している。誤った仮説から得られた知識が、新たな科学の発展につながることもあるのだ。

 現在、第9惑星の探索は続いている。果たしてこの惑星は実在するのか。それとも、ヴァルカンと同じ運命をたどるのか。科学者たちの努力が、太陽系の未知の世界を明らかにする日は近いのかもしれない。

 この探求がどのような結末を迎えるのか、今後の研究が待たれるところである。

参考:Anomalien.com、ほか

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