これが“世界の終わり”の真実なのか ― 殺戮に走る者、最期の絆を求める者… 仮想世界の終末実験が描いた衝撃の未来図

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 世界の終わりが判明した時、人はどんな行動に出るのか――。終了が近づいたオンラインゲームのプレイヤーを分析すると、自暴自棄になって暴力や略奪に走る者もいれば、私利私欲を捨ててよりソーシャルになる者もいたという――。

■世界の終わりで人々は何をするのか?

 この世の終わりを題材にした物語は少なくないが、もしも本当に世界が終わる日がわかった時、人々はどのような行動に出るのだろうか。

 2017年の研究では多人数が参加したオンラインゲームのプレイヤーの行動を観察することで、世界の終わりが近づくにつれて人々が実際にどのように行動するかを検証していて興味深い。

 このオンラインゲームは「ArcheAge(アーキエイジ)」というタイトルのMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)で、観察は初期のテストプレイ期間中に行われた。

 テストプレイに参加したプレイヤーたちは通常通り自由にプレイしていたが、このゲーム世界は11週間後に終わることがあらかじめ告知されていた。終わりが近づいた時期にプレイヤーの行動に変化が見られたのだろうか。

 米ニューヨーク州立大学バッファロー校をはじめとする研究チームは、ゲーム内の行動記録2億7000万件を分析し、プレイヤーがゲームの終わりが近づいた時に行動が変化するかどうかを調べた。

 彼らの分析により、ほとんどのプレイヤーが普通にゲームプレイを続けていた一方で、一部の「異常な」プレイヤーが暴力的になったことを突き止めた。

 研究者たちは最後の2週間以内にゲーム内で“殺人”を犯した334人を特定し、世界の終わりが近づくにつれて一部のプレイヤーが“殺人”を犯す確率が急速に高まったことが判明した。

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これらのグラフは、各集団の無法者によって殺害された他のプレイヤーの数を示している  画像は「Daily Mail Online」より

 研究チームはこの変化に対する最も可能性の高い説明は、世界がすでに破滅に向かっていたため、暴力に対する通常の罰則が効力を失ったことだと述べている。つまり一部は“無法者”に変貌したのだ。

 ArcheAgeでは、同じゲーム内種族の間のプレイヤー対プレイヤーの戦闘は“殺人”として分類され、通常はゲーム内でペナルティが課せられる。

 しかしテストプレイ期間の終了が近づくと、これらのペナルティは意味を失うことになる。当然だがゲームの進行自体の意味もどんどん希薄になってくる。

 こうして「責任感と愛着」を失ったプレイヤーの一部が反社会的行動に傾いてしまうのは、認められることではないが理解はできるだろう。

 しかし研究チームは、現実のこの世の終わりで人々が血みどろの争いに駆り立てられるかどうかについてはまだ何も言えないという。この334人の例外はあったものの、実はほとんどのプレイヤーはむしろソーシャルになっていたのだ。

 終わりが近づくにつれて、プレイヤーはゲームの進行を止めたり、レベルアップやクエストの完了といったアクティビティを諦める傾向が高まった。

 その代わりにプレイヤーは社会的な活動を大幅に増やし、人的交流を活発に行ったり、グループプレイのために「パーティー」を結成したりするソーシャルな行動がピークに達したことが観察された。

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これらのグラフは、各集団の無法者によって殺害された他のプレイヤーの数を示している  画像は「Daily Mail Online」より

 これは危機の共有が実際に既存の社会的関係を強化し、新しい関係の形成を促す可能性があることを示唆しているということだ。

「危機の際には、人々は互いに支え合うために集まり、人々を結びつける社会的な絆を強めることが多い」と研究者は言及している。

 世界の終わりは一部で“無法者”を生み出すが、一方で私利私欲を捨てて多くの人々と最期を共に迎えようと望んでも不思議ではないのだろう。たとえば小中高の最終学年で卒業が近くなった時期のクラスの雰囲気などに近いのかもしれない。近い将来、本当に世界の終わりが判明することがあっても慌てることなく冷静でありたいものである。

参考:「Daily Mail」ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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