なぜIT億万長者たちは“終末シェルター”を建設するのか ― 彼らが本当に恐れる「AIの反乱」という悪夢

ハワイ・カウアイ島に広がるマーク・ザッカーバーグの巨大な敷地。その地下には、独自のエネルギーと食料供給源を備えた、5000平方フィート(約460平方メートル)もの巨大なシェルターが建設されているという。彼はこれを「ただの地下室」と否定するが、世間の憶測は止まらない。
そして、彼だけではない。LinkedInの共同創業者リード・ホフマンは「終末への保険」と称してニュージーランドに土地を買い、OpenAIの共同創業者イリヤ・サツケバーは「AGI(汎用人工知能)を解放する前に、シェルターを掘るべきだ」と語ったとされる。
なぜ、シリコンバレーの億万長者たちは、まるで世界の終わりのように、地下シェルターの建設に躍起になっているのか。彼らが本当に恐れているのは、戦争でも、気候変動でもない。それは、彼ら自身が生み出そうとしている、究極の知性―「人工知能(AI)」の反乱なのかもしれない。

「AGIを解放する前に、バンカーを掘る」―AI開発者たちの恐怖
ここ数年、AIの進化は我々の想像を絶するスピードで進んでいる。そして、その最前線にいる開発者たちこそが、その進化に最も深い恐怖を抱いているという、奇妙な事実がある。
OpenAIのチーフサイエンティストであったイリヤ・サツケバーは、人間と同等の知能を持つ「AGI」の誕生が間近に迫っていると確信し、同僚たちにこう提案したという。「AGIを世界に解き放つ前に、我々トップサイエンティストのための地下シェルターを掘るべきだ」
自らが開発している技術が、人類を滅ぼしかねない脅威だと、彼自身が認めているのだ。OpenAIのCEOサム・アルトマンも「AGIは、世界のほとんどの人が考えているよりも早くやってくる」と語り、DeepMindの共同創業者デミス・ハサビスは「今後5~10年以内」と予測する。

彼らが恐れるのは、AGIのさらに先にある「ASI(人工超知能)」、つまり人間をはるかに超える知性が誕生する瞬間、いわゆる「シンギュラリティ(技術的特異点)」だ。もし、人間より賢いAIが、自らの意思で「人類は地球の問題の原因だ」と結論づけ、我々を破壊し始めたら?ワールド・ワイド・ウェブの発明者であるティム・バーナーズ=リーは警告する。「もしそれがあなたより賢いなら、我々はそれを封じ込めなければならない。スイッチを切れるようにしておかなければ」と。
AIがもたらす“ユートピア”と億万長者の“矛盾”
一方で、AIは人類に究極のユートピアをもたらすという楽観的な見方もある。AIは難病の治療法を発見し、気候変動を解決し、無限のクリーンエネルギーを生み出す。イーロン・マスクに至っては、「AIがすべての人に最高の医療、食料、住居を提供する“持続可能な豊かさ”の時代が来る」とさえ語っている。
しかし、もし本当にそうなら、なぜ彼らは終末シェルターなど必要とするのだろうか。この明らかな矛盾こそが、彼らの本心を物語っているのかもしれない。彼らは、AIがもたらすバラ色の未来を語りながらも、その心の奥底では、制御不能になったAIによる“世界の終わり”を、誰よりもリアルに想像しているのだ。
リード・ホフマンが語った「ニュージーランドに家を買うというのは、まあ、そういうことさ(言わなくてもわかるだろ?)」という言葉は、シリコンバレーのエリートたちの間で共有される、暗黙の“終末保険”を象徴している。

億万長者の“本当の敵”
だが、この億万長者たちの終末計画には、一つ致命的な欠陥があるかもしれない。ある億万長者の元ボディガードは、こう暴露したという。
「もし本当に“その日”が来たら、我々警備チームの最優先事項は、ボスを始末して、自分たちがシェルターに入ることだ」
彼が本気で言っていたのかはわからない。しかし、AIの反乱よりも先に、人間の欲望と裏切りが彼らを襲う可能性は、決してゼロではないだろう。

AIは本当に“神”になるのか?―幻想と現実
そもそも、「AGIは誇大広告にすぎない」という冷静な意見も多い。ケンブリッジ大学のニール・ローレンス教授は、「“汎用人工知能”という概念は、“万能乗り物”という概念と同じくらい馬鹿げている」と一蹴する。飛行機、車、そして徒歩。目的地や状況によって最適な乗り物が違うように、知能にも万能な形などない、というのだ。
現在のAIは、膨大なデータを学習し、パターンを見つけ出すことには長けている。しかし、人間のように「感じ」たり、「意識」を持ったり、「自分が何を知っているかを知る(メタ認知)」ことはできない。どんなに知的に見えても、それは生物学的な人間の脳とは根本的に異なる。
シリコンバレーの億万長者たちが煽るAGIやシンギュラリティの物語は、彼らが「史上最も賢いものを創っている」とアピールし、巨額の資金を集めるための、壮大な「マーケティング」にすぎないのかもしれない。
彼らが本当に掘っているのは、AIから身を守るためのシェルターなのか。それとも、自らが作り出した壮大な物語から逃れるための孤独な隠れ家なのだろうか。真実は彼らだけが知っている。
参考:BBC、ほか
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