「宇宙線」が地球外生命体のエネルギー源に? 科学者が示唆する「太陽系に未知の生命が潜んでいる」可能性

生命が存在できるのは、地球のように水と緑が豊かな惑星だけだと信じられてきた。しかし、その常識を覆す新たな研究が発表された。地球外生命体は、私たちが考えるよりもずっと近く、太陽系のすぐそばに潜んでいる可能性があるという。
その鍵を握るのは「宇宙線」だ。過酷な環境と見なされていた放射線が、実は未知の生命体を支えるエネルギー源になっているかもしれないというのだ。
放射線が生命の糧に? 「宇宙線」の新たな役割
宇宙生物学の国際学術誌『International Journal of Astrobiology』に掲載された研究によると、宇宙空間を飛び交う高エネルギー粒子である「銀河宇宙線」が、生命を維持する燃料になり得るという。
宇宙線が物質に衝突すると放射線が発生し、化学反応(放射線分解)を引き起こす。このプロセスによって水分子などが分解され、生命活動に必要なエネルギー源となる副産物が生成されるのだ。地球上でも、ウランの放射性崩壊を「食べて」生きる極限環境微生物が地下深くに存在することが知られている。研究チームは、これと同じ仕組みが他の天体でも起こりうると考えた。
有望な候補は土星の衛星「エンケラドゥス」
研究チームは、火星、木星の衛星エウロパ、そして土星の衛星エンケラドゥスの3つの天体を対象にシミュレーションを行った。宇宙線が地表下の水分子を分解し、生命に必要な電子をどれだけ生成できるかを計算したのだ。
その結果、最も有望なのはエンケラドゥスであることが判明した。シミュレーションでは、地表から約60センチメートルの深さで、1立方センチメートルあたり最大4万2900個の細胞が生息できる可能性があるという。火星やエウロパでも、それぞれ一定数の細胞を維持できるエネルギーが得られることが示唆された。
もちろん、ここで想定されているのは緑色の宇宙人ではなく、微生物のような単純な生命体だ。しかし、生命が存在しうる環境の定義が広がることは、地球外生命探査において画期的な意味を持つ。

氷の中に眠る生命の痕跡
この仮説を裏付けるような発見もすでになされている。今年10月に『Nature Astronomy』で発表された別の研究では、エンケラドゥスの氷のサンプルから有機化合物が発見された。これは、NASAの探査機カッシーニが2008年の接近通過時に採取した氷の破片を分析した結果だ。
この発見は、エンケラドゥスの海に生命の材料となる炭素ベースの物質が豊富に存在することを示している。「エンケラドゥスには生命が進化し、繁栄するための条件がすべて揃っている」と、フランス国立科学研究センターの宇宙生物学者キャロライン・フレシネ氏は期待を寄せる。
放射線であれ熱水噴出孔であれ、太陽系内の別の場所で生命が見つかれば、それは「生命の誕生は地球だけの奇跡ではない」という証明になるだろう。
宇宙のどこにでも生命が溢れている可能性に、私たちはまた一歩近づいたのかもしれない。
参考:Popular Mechanics、ほか
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