AIボイスが突然ブッ壊れはじめ… YouTubeを蝕む”スロップ動画”の恐怖と“誰も最後まで見ていないコンテンツ”の闇

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壊れたAIが「ホワ……ホワホワホワ」と繰り返す異様な動画

 YouTubeのAI生成動画汚染、いわゆる「AIスロップ」問題は、もはや笑い飛ばせないレベルに達しつつある。

 プラットフォームには粗雑なAI生成映像が溢れかえっており、幼児・未就学児を明確にターゲットにした”なんちゃって教育動画”から、偽の映画トレーラーまで、その種類は多岐にわたる。嫌気がさした視聴者を取り込もうと、「AIなし」をうたうプレイリストをわざわざ作るチャンネルまで現れるほどだ。YouTubeもモグラ叩き的な対策を講じてはいるが、大部分は象徴的な意味合いにとどまっており、問題のあるチャンネルは今も次々と網をくぐり抜けている。

2007年開設の”休眠チャンネル”が突然90本のスロップを投下

 そんな中、特に奇妙な事例として注目を集めているのが「Joe Liza WWE」というチャンネルだ。2007年に開設されたこのアカウントは登録者数2000人に満たないが、ここ最近、プロレス団体WWEにまつわる話題を扱った最長2時間にも及ぶ動画を大量に投稿し始めた。

 内容は実写映像とAI生成映像を適当につなぎ合わせ、そこにビデオゲーム「WWE 2K」のゲームプレイ映像がランダムに差し込まれるという、カオスな代物。しかし何より問題なのは、そこに乗せられたロボット音声のナレーションだ。

 ブルースカイのあるユーザーが気づいて広まったのだが、最近の動画ではAIの男性ナレーターが突然「ホワ」「ホワ」「ホワ」と、同じ単語を数分間にわたって繰り返しながら崩壊していくシーンが含まれているのだ。終盤にはさらに不快な口の音まで発生するという、完全に壊れたラジオのような状態になる。

 コメント欄は当然のことながら混乱と笑いで溢れている。

「泣いてるわ、これ今まで見た中で一番笑えるやつ」

「4分でAIナレーターがストローク起こしてるの、誰か触れない?」

 実際に上記動画で聞いてもらえばわかるが、不気味を通り越して笑えてくる。しかし、なぜこうなるのかが誰にも分からないというのが現代らしい怖さもある。

「チャック・ノリスは殺された」偽情報まで垂れ流す問題の本質

 壊れたナレーターだけなら笑い話で済むかもしれないが、このチャンネルが抱える問題はそれだけにとどまらない。

 動画のタイトルには「WWE伝説たちがチャック・ノリスが”殺された”理由を明かす」というものまで存在する。3月に病院で亡くなったこの俳優の死を、まるで陰謀めいた”抹殺”であるかのように示唆する内容だ。また別の動画では、レスラーのジェイド・カーギルがオーストラリア人プロレスラーのリア・リプリーを「暴行して逮捕された」という完全な虚偽の主張も展開されている。

 このチャンネルの背後に誰がいるのかは現時点では不明だ。アカウントが最初に投稿した動画は2007年にさかのぼり、ピクセルが荒い映像の中で2人の少年がフットボールで遊んでおり、スラブ系の言語を話しているように聞こえる。その後何年も沈黙していたアカウントが、約1か月前から突然90本以上のWWEテーマのスロップ動画を投下し始めた。

 狙いとしてはYouTubeのアルゴリズムを利用し、関連動画や自動再生で無防備な視聴者を誘導することが考えられる。ただし収益化については不明で、YouTubeパートナープログラムへの参加には登録者1000人以上、過去12か月で4000時間以上の公開視聴時間が必要なため、このチャンネルが広告収入を得ているかどうかは定かではない。

 今回の件は決して孤立した事例ではない。昨年には404メディアが「True Crime Case Files(真犯罪ケースファイル)」と称するチャンネルを特定しており、そこではAI生成映像とともに”フィクションの真犯罪話”が量産されていた。

 最も根深い問題は、こうした動画が「誰一人として最後まで見ていない」という点だ。作る人間がいて、アルゴリズムが拡散し、視聴者が誤情報に触れる。その全工程から、人間の目と判断が完全に抜け落ちている。AIスロップが生み出したのは、コンテンツというよりもコンテンツの幽霊なのかもしれない。

参考:Futurism、ほか

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