高校生「カンニング自殺」裁判の争点に疑問 ― 精神科医の意見書は無視!?

~【ジャーナリスト渋井哲也のひねくれ社会学】都市伝説よりも手ごわいのは、事実だと思われているニセモノの通説ではないだろうか? このシリーズでは実体験・取材に基づき、怪しげな情報に関する個人的な見解を述べる~


 自殺の解釈をめぐる裁判なのに、精神科医の意見を無視する? 

 2009年5月、首都圏の私立高校に通う高校3年生(当時)だった男子生徒が自殺した。学校内での自殺だったため、独立行政法人日本スポーツ振興センターの「災害共済給付(死亡見舞金)」の対象だと思った遺族が申請したところ、「高校生の場合、故意による死亡」であるとして、対象外とされた。

 これをうけて、遺族側は同センターを相手に提訴。しかし自殺研究の専門家である精神科医の意見書は無視され、東京地裁で遺族側は敗訴。12月10日に行われた控訴審の東京高裁も、同様の判決を下した。遺族は最高裁に上告する意向である。


■自殺のきっかけ

 事件は、09年5月。男子生徒が、校舎4階から飛び降り自殺をした。中間テストでのカンニングが見つかり、指導を受ける直前だった。同校ではカンニングが発覚すると、全科目「0点」になる。試験後、担任も「やったのか?」と聞くと、生徒は黙って頷いたという。試験科目は単位を落としたことがある英語のグラマー。担任は指導しようと、「荷物を取ってきなさい」と言ったが、その後、生徒は教室に戻らず、4階に上がり、廊下窓から飛び降りたのだ。

 7月。遺族は同センターに死亡見舞金の申請をしたところ、高校生の場合、「故意による死亡」にあたるため、支給対象ではないと却下された。たしかに、同センター施行令には「故意に、負傷し、疾病にかかり、又は死亡したとき」は、災害共済給付は行わないとしている。

 これらの事実認定については、ほぼ争いはない。争点は、この高校生による自殺が故意なのか? ということだ。遺族側は「学校管理下における事故」であり、「自ら望んで望んだ死」ではなく、「追い詰められた死」であると訴えている。

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