元少年AのHPはなぜ突然一般に公開された? 開設をめぐる3つの謎
1997年の神戸連続児童殺傷事件で逮捕され、手記『絶歌』(太田出版)を出版した元少年Aが、「週刊文春」(文藝春秋)と「週刊新潮」(新潮社)、「女性セブン」(小学館)などの各編集部に手紙を送付。『絶歌』出版の経緯と、“公式ホームページ”「存在の耐えられない透明さ」開設を報告した。かつて罪を犯した人物がホームページを開設することはそこまで珍しいことではない。しかし元少年Aの場合、『絶歌』での印象との違いに驚かされたのは言うまでもない。
■謎1 突如開設された公式HP
HP開設を知った私は、あるルートからURLを入手した。その時点で大型ネット掲示板ではまだURLを特定されていなかった。同時に、HPの内容にある文字でGoogle検索にかけたが、表示されなかった。少なくとも10日未明までは、検索結果に表示されなかった。しかし、翌朝には掲示板はおろかTwitter、FacebookなどのSNSでもHPの情報が出回っていた。ホームページのソースには検索結果を表示しやすいメタタグが入っているが、これが影響したのだろうか。それとも、利用しているサービスの仕様なのか。HPの内容は、トップは特に普通の自己紹介であり、特筆すべき文言があるわけではない。ただし、「『絶歌』出版に寄せて」の中では「事件、被害者、家族、社会復帰後の生活について、これまで誰にも開かせなかった胸の内を、包み隠さず、精魂込めて赤裸々に書き綴りました」とある。たしかに、同書では、胸の内を書き綴っていたが、少年院内の生活についてはあえて触れなかったとも読み取れる。
■謎2 何がしたいのか不明な公式HP
コンテンツは少ない。「ギャラリー」と「レビュー」しかない。「ギャラリー」には、ナメクジに関するイラストや写真、自身の全裸姿、ナメクジと自身のコラージュなどを掲載している。
ナメクジは、元少年Aにとっては、「『心象風景』ならぬ『心象生物』」(P.50)と『絶歌』で書いている。イラストはナメクジには見えないが、彼のイメージはこうなのだろう。ただし、それは居場所なき自分をイメージさせたものなのかもしれない。というのも、ホームページで、<人に嫌悪感を与えるためだけに完璧に計算し尽くされた、ある意味“デザインのひとつの極限″>とも書いているからだ。人に嫌われる存在というのを自覚している。
元少年Aが関東医療少年院に収容されていた当時の院長、杉本研士氏は「週刊新潮」(9月17日号)で、こうコメントしている。
「彼の場合、性的サディズムの最初の行動は、ナメクジの解剖でした。ホームページにおけるナメクジの扱いなどから判断するに、彼は治り切っていなかったと認めざるを得ない」
HPには、セルフポートレートのコーナーがあり、そこには、自身の全裸とナメクジを巨大化させたものと思われるものをコラージュした写真が掲載されている。たしかに、ナメクジは性的象徴なのかもしれない。ただ、それがサディズムの表現なのかは疑問が残る。仮にそれがサディズムであっても、行動に移しているかどうかは大きな差だ。
■人間性は事件当時から変わりなし?
また、自身の写真の横には月と太陽が描かれている。犯行当時、バモイドオキ神という神なる存在を描いていたが、そこにも月と潰瘍が描かれていた。バモイドオキ神とは、犯行当時、元少年Aがノートに描いた“神”だ。小学3年生の女児に怪我をさせたときの報道を見て、当時このように書いていた。
H9.3.17 愛する「バモイドオキ神」様へ
今日の朝新聞を読むと、昨日の「聖なる実験」の事がのっていたのでおどろきました。内容を読んでみると、どうやらあの2人の女の子は死んでいなかったのです。ハンマーでなぐった女の子は、意識不明の重態で入院し、ナイフで刺した方の女の子は軽いケガですんだそうです。人間というのは壊れやすいのか壊れにくいのか分らなかったけど、今回の実験で意外とがんじょうだということを知りました。
このセルフポートレートついて、臨床心理士の矢幡洋氏は『女性セブン』(9月24日号)で、「当時バモイドオキ神を描いていた位置に、自分の身体を置いている。今の自分は神に成り代わったという意識の表れなのか。いずれにせよ、Aの中にある崇めるべきイメージは18年前から変わっていない」と書いている。
かつてのバモイドオキ神のイラストを見ると、たしかに向かって左側に「月、右側に太陽」が描かれている。しかし、バモイドオキはイラスト全体の上部にあるが、今回のセルフポートレートは中心になる。そのため、イメージが一緒というわけではないのではないか。
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2024.10.02 20:00心霊元少年AのHPはなぜ突然一般に公開された? 開設をめぐる3つの謎のページです。渋井哲也、社会学、元少年A、絶歌などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで