>  > 思想なくただ殺人者たちを“模倣”し続けた女子学生

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※イメージ画像:『人を、殺してみたかった 名古屋大学女子学生・殺人事件の真相』著:一橋文哉(角川書店)

「何も変わっていない」「反省ゼロ」「治っていないのではないか?」

 突如として開設された酒鬼薔薇聖斗こと元少年Aの公式ホームページを見た者は誰もがそう思ったのではないか。

 ホームページのコンテンツには、大量のなめくじを使ったグロテスクなコラージュ、不気味なドローイングと、CG加工が並ぶ。書籍、映画のレビューでは「同郷の“異”人」として1981年にパリで人肉食殺害事件を起こした佐川一政への言及もある。

『絶歌』(太田出版)において、元少年Aは“90年代の子ども”を自負する。1982年生まれの彼は、幼少期にバブルが過ぎ去り、思春期の始まりに阪神・淡路大震災を経験し、その後、日本経済の長引く不況下に身を置かれた。何もいいことがなく、自身を覆う喪失感や、存在の寄る辺のなさ――『絶歌』で繰り返し記される内容は、少年期の気分としてはわからなくもない。ただ、お前はもう30歳を過ぎたひとりの人間だろうと問いかけたくもなる。

 元少年Aの言動を見る限り、約6年半に及んだ、医療少年院での矯正教育は何だったのだろうかと失望を感じた者も多いのではないか。そもそも『絶歌』には、医療少年院に関するまとまった描写はない。事件を起こし捕まるまでと、退院後の生活の中で、回想的に触れられるのみだ。元少年Aが、どのような治療を受け、回復をしていったのかが見えてこない。

 先ごろ発売された『人を、殺してみたかった:名古屋大学女子学生・殺人事件の真相』(角川書店)においても、凶悪犯罪者への矯正教育に対する懐疑が記されている。著者は、事件もののルポルタージュを多く手掛ける一橋文哉である。

■名古屋大学女子学生殺人事件

 著作では冒頭で、2014年7月に発生した佐世保女子高生殺害事件の16歳の犯人が、刑事処分を受けずに、第三種少年院(旧称医療少年院)送致となったことに疑義を示し、厳罰化を唱える。第三種少年院は最長26歳までしか収容できず、「本当に更生したうえでの社会復帰が確約されていない」制度上の問題点を指摘する。(p.7)

 異常犯罪をした者、または犯そうとしている者に社会は何をなしうるか。そこには、とても困難な問いかけが横たわる。

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