男性の女体化、物体の擬人化の背景にはBL文化の存在が?國學院大學非常勤講師・伊藤慎吾インタビュー
■西洋の童話の流入から萌えキャラへ
――その後、明治時代になると西洋からさまざまな文化が入ってくると思いますが、大きな変化は見られますか?
伊藤 江戸時代までは、主に戯作者が擬人化したさまざまなものを面白おかしく物語にして出版し、また浮世絵師も「夏の夜虫合戦」のように異類たちの合戦を好んで描いていました。ところが、明治に入ると、西洋からアンデルセン童話やグリム童話などの児童文学が絵本として入ってきます。
当初は、それらの絵本に描かれている洋服は和服に、名前も日本風に換え、作り直していたんですが、それと同時に西洋的な擬人化の技法が入り、前時代的な作風を変えない戯作者の仕事はなくなっていきます。さらに明治時代後期になると、西洋的な技法を取り入れた新しい子ども向けの絵本が作られていくことになり、日本で創作された童話も次々に誕生し、児童文学が花開いていきます。また新聞・雑誌を主とする風刺画の影響も見逃がせません。
このように西洋的な絵の技法が取り入れられることにより、中世後期以来の擬人化のルールとはまったく違う文脈で新しいキャラクターが作られるようになりました。たとえば、中世以来首から上だけが虎などで、下は人間の姿形だった動物キャラクターが、西洋的な擬人化の技法では、熊だと『くまのプーさん』のようなぬいぐるみのように描かれるようになります。
かくして江戸時代までの画法や表現は細々と踏襲されはしますが主流ではなくなったのです。
――そのぬいぐるみのような画法が現代の擬人化されたキャラクターへと踏襲されるわけですか?
伊藤 明治以来の児童文学を中心とした擬人化のキャラクターは、たとえばお肉屋さんの看板にあるような、豚がコックの格好をしたキャラクターのように商業的な広告として、主に子どもや子どものいる家庭を中心に広がっていきます。器物妖怪以外で商品などの物に目鼻や手足が付いてキャラクター化するのも近代以降です。
ただ、近年の萌え擬人化されたキャラクターとは区別しないといけません。
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