【未解決】謎の「幽霊飛行船L-8」消えた乗組員と奇妙な漂流

2人の乗組員が謎の状況で行方不明になったアメリカ海軍の飛行船L-8。サンフランシスコ上空を無人で漂っている。 By U.S. National Archives – https://www.ststworld.com/ghost-blimp/, Public Domain, Link

 1942年、太平洋戦争のさなか、サンフランシスコの空に突如として幽霊船が出現した――。その正体は、アメリカ海軍の飛行船L-8。乗組員2名を乗せたまま忽然と姿を消し、数時間後、なぜか無人となってサンフランシスコ上空を漂流していたのだ。まるで意志を持ったかのようなその不可解な飛行は、人々を恐怖と驚愕に陥れた。L-8は「幽霊飛行船」と呼ばれ、その謎は80年以上経った今も解き明かされていない。果たして乗組員はどこへ消えたのか?L-8に何が起きたのか?

L-8「ゴースト飛行船」事件の概要

 1942年8月16日、不可解な事件がアメリカ海軍を揺るがした。L級飛行船L-8に乗り込んだ2名の乗組員が、太平洋上空で忽然と姿を消したのだ。L-8は、同日午前、サンフランシスコのトレジャー・アイランド海軍基地から離陸。沿岸哨戒任務にあたっていた。

 しかし、数時間後、L-8は乗組員不在のまま、サンフランシスコの西に位置するオーシャン・ビーチ沖に突如出現。フォート・ファンストン近くの海岸に機体を接触させ、損傷しながらも再び浮上し、今度はサンフランシスコ市街地上空を漂流するという異様な光景を繰り広げた。

 最終的に、L-8はサンフランシスコ南部のデイリー・シティ、ベルビュー・アベニューにある民家の前で墜落した。乗組員であるアーネスト・デウィット・コディ中尉とチャールズ・アダムズ少尉の行方は、この時点で行方不明。一体L-8の中で何が起きたのか? 謎は深まるばかりであった。

戦時下の緊張と飛行船の役割

 L級飛行船は、グッドイヤー社製の広告用小型飛行船をベースに、1937年にアメリカ海軍向けに開発された軟式飛行船である。真珠湾攻撃後、日本海軍による西海岸への攻撃が現実の脅威となり、沿岸警備の必要性が高まっていた。日本軍はカリフォルニアの油田やオレゴンの軍事施設を爆撃し、ロサンゼルスでは誤報による戦闘まで発生するなど、緊張感は極限に達していた。

 海軍はグッドイヤー社の飛行船5隻を接収、L-4からL-8の名称を与え、沿岸哨戒や訓練に投入した。L-8は「レインボー」または「レンジャー」と呼ばれていた時期もあったという。1942年4月には、かの有名なドーリットル爆撃隊を乗せた空母ホーネットへ部品を輸送するなど、重要な任務を遂行していた実績もあった。

事件発生、L-8の不可解な漂流劇

 1942年8月16日早朝、対潜哨戒任務のため、L-8はサンフランシスコのトレジャー・アイランド海軍基地から離陸した。27歳のコディ中尉と、これが士官初飛行となる35歳のアダムズ少尉の2名が搭乗。爆雷と機関銃を装備し、ファラロン諸島、ポイント・レイズなどを経由してゴールデン・ゲート・ブリッジへ戻る予定だった。天候は快晴、L-8も過去1000回以上の飛行実績があり、最近点検を受けたばかりだった。

 離陸後、L-8はファラロン諸島沖で油膜を発見、海面近くまで降下して調査する様子が目撃される。これが、乗組員が搭乗しているL-8の最後の目撃情報となる。その後、L-8は管制との連絡を途絶え、予定航路を無視して東へ進路変更。数時間後、サンフランシスコのオーシャン・ビーチに無人状態で漂着した。

 浜辺にいた釣り人が係留を試みるも、L-8は再び浮上。崖に接触しプロペラを破損、爆雷を投下したことでさらに上昇、サンフランシスコ市街地を低空飛行で横断するという異常事態となった。最終的に、デイリー・シティの民家で墜落したL-8は、ゴンドラのドアが開いているにもかかわらず、中には誰もいなかった。

イメージ画像 Created with DALL·E

残された謎と様々な憶測

 警察と軍関係者は直ちに墜落現場に駆けつけた。ゴンドラのドアは開いたままで、墜落の衝撃も軽微だったため、乗組員は無事だったはずだが、コディ中尉とアダムズ少尉の姿はどこにも見当たらなかった。空、陸、海からの捜索でも2人の行方は分からず、捜索は8月18日に打ち切られた。

 当局は当初、2人が海上でL-8から脱出したと推測したが、パラシュート3つとゴム製の救命いかだはゴンドラに残されていた。さらに、飛行船の無線とエンジンは作動しており、遭難信号も発信されていなかった。これは、乗組員の失踪が突然の出来事であったことを示唆している。海軍の調査委員会は、L-8が撃墜、焼失、または海に接触した形跡はなく、コディ中尉とアダムズ少尉に不祥事の証拠もないと結論づけた。2人は1943年に死亡宣告された。

 公式には、油膜の位置に煙幕マーカーを投下するため、1人の乗組員がゴンドラの後部ハッチを開けた際に誤って落下、もう1人の乗組員が救助を試みた際に2人とも海に転落したという説が採用された。急激な重量減少により、無人となった飛行船は急上昇したと考えられている。しかし、公式見解以外に、2人の失踪とL-8の謎めいた飛行を説明しようと様々な憶測が飛び交った。日本軍に捕獲された、亡命した、脱走計画が失敗した、果ては宇宙人に誘拐されたといった説まで登場した。真相は藪の中である。

L-8の第二の人生

 L-8はすぐに修理され、任務に復帰した。戦後、グッドイヤー社に売却され、アメリカと改名、1982年に退役するまでスポーツイベント上空を飛行した。その後、ゴンドラはL-8のマーキングに塗り直され、フロリダ州ペンサコーラにある国立海軍航空博物館に展示されている。

 まるで怪談のような事件だが、いつか真相が明らかになる日が来るのだろうか。

参考:Wikipedia、ほか

TOCANA編集部

TOCANA/トカナ|UFO、UMA、心霊、予言など好奇心を刺激するオカルトニュースメディア
Twitter: @DailyTocana
Instagram: tocanagram
Facebook: tocana.web
YouTube: TOCANAチャンネル

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

【未解決】謎の「幽霊飛行船L-8」消えた乗組員と奇妙な漂流のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

人気記事ランキング17:35更新